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2006年08月08日(火) 02時00分

8月8日付・読売社説(1)読売新聞

 [労働契約法]「労使双方がそっぽを向いた」

 厚生労働省の意向に労使がそろって反発するというのは、異例の展開である。

 厚労省の労働政策審議会・労働条件分科会の審議が紛糾している。同省は来年の通常国会への法案提出を目指し、7月中に中間の取りまとめをしたいとしていたが、それも見送らざるを得なかった。

 審議が始まったのは昨年10月だ。新たに労働契約法を制定するとともに、労働基準法の労働時間の規定などを大幅に見直すことが議題である。今年6月には厚労省から素案も示された。

 素案の中身は多岐にわたる。解雇や転勤、出向などの労使間のルールを明確にする。時間外労働の規定を見直す。懲戒や退職のルールも検討対象だ。

 しかし、これに労使双方が真っ向から異を唱えた。経営側は「議論が十分でない」とする統一意見を出した。労働側も同調した結果、審議は1か月以上も中断したままになっている。厚労省の幹部は「根回し不足だった」と説明しているが、そう単純な問題ではない。

 どれも経営や雇用に大きな影響を及ぼすテーマばかりだ。しかも、ほとんどの項目で労使が鋭く対立している。

 素案では、解雇紛争が起きた後の職場復帰は難しいとして、金銭的解決制度の導入が提案された。経営側は「迅速な解決につながる」と賛成したが、労働側は「カネさえ払えば解雇できるという風潮が広まる」と主張している。

 管理職と同じように、時間外労働などの規定に縛られない自由な働き方をホワイトカラーの一部に広げる制度にも、労働側は「長時間労働を助長する」として反対している。

 賃金・労働時間の変更、出向・転籍を求める際、従業員に書面で示すことを経営側に義務付ける制度や、時間外労働の割増率の引き上げには、経営側が反発している。「総務部門がない中小企業には大変な負担となる」「必要のない残業がかえって増える」という理由からだ。

 労使双方に、アメとムチとなるような制度改正が盛り込まれている。厚労省はこれで了承が得られると考えたのだろうが、見通しが甘すぎた。なぜ法律で規定する必要があるのか、説得力あるデータを示しているとも言い難い。

 雇用ルールは労使の納得が得られてこそ円滑に運用される。ここは結論を急がず、素案を再検討し、審議項目を大幅に絞るなどの軌道修正が必要だろう。

 過酷な長時間労働など、一部の職場に問題があることも事実のようだ。どのようなルールが望ましいか、労使も大局的見地から審議を尽くしてもらいたい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060807ig90.htm