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2006年08月06日(日) 00時00分

ネット証券 相次ぐ参入 東京新聞

 インターネット取引専門の証券会社が、夜間に株取引ができる私設市場(PTS)の開設に相次いで乗り出す。証券取引所が開いている昼間の時間帯に売買するのが難しいサラリーマンなどの個人投資家がターゲットだ。投資家が夜も昼も株価を気にする時代になるのか。 (経済部・林知孝)

 ■参入合戦

 帰宅後も夜間に株取引が可能になるという新たなサービス競争に対し、デイトレーダー経験のある東京都内の男性(24)は「ライブドア事件での強制捜査のように、夕方以降にニュースが動いたり、企業の合併発表が飛び込んできた場合でも、すぐに株を売買できるのは便利だ」と関心を示す。

 ネット証券を利用する女性(39)は「夜間も値動きが気になれば、短期売買をあおり、ますますゲーム感覚にならないか」と慎重に受け止めた。

 ネット証券業界に激震が走ったのは、七月十二日。この日午前、業界五位(預かり資産ベース)のカブドットコム証券が、証券取引所と同じオークション方式による夜間取引市場の開設計画を発表、記者会見した斎藤正勝社長は「“二番手”は当分出ないと思いますよ」と誇らしげに語った。

 それから約五時間後。二枚つづりの広報文が報道機関に届けられた。「夜間取引開始に向けた共同準備を行うことで合意しました」。業界首位のSBIイー・トレード証券と四位の楽天証券らによる“宣戦布告”だった。

 業界三位の松井証券も動いた。株の売却代金をすぐに口座から引き出せる「即時決済方式」の導入を視野に、来春から夜間取引に参入すると七月二十八日、発表した。

 ■東証が動かず

 だが、記者会見に臨んだ松井道夫社長は苦り切っていた。

 「本来は東証が(夜間取引を)やるのが筋。それを一社が抜け駆けし、楽天らが慌てて反応した。なぜ待てないのか」

 カブコムとイー・トレ、楽天、松井は二〇〇三年八月に「インターネット証券四社懇話会」(現在はネット証券評議会)を結成。個人投資家が参加しやすい投資環境の整備を目的に掲げ、その柱として、東京証券取引所に夜間取引の開始を協調して働きかけてきた。

 しかし東証は「コストに見合う取引が見込めない」と“拒否”。「ネット系以外の証券会社はほぼ反対」(東証幹部)という事情が大きかった。一方、株式相場の回復と軌を一にして、ネット株取引を行う個人投資家の数が急増。囲い込みのために、各社は売買手数料の値下げ合戦に突入し「協調などと言ってられなくなった」(ネット証券関係者)。

 ■どう信頼確保

 ネット証券評議会の調査では、個人投資家の八割以上が夜間取引の実施に賛成。ニーズは高いとみられるが、横山淳・大和総研制度調査部統括次長は「日常的に参加する投資家の数が成否の鍵を握る」と指摘する。

 二〇〇一年から取引所終値で夜間取引を行っている業界二位のマネックス証券では「夜間の参加者は昼間の1%未満」(広報担当)というが、横山氏は「オークションでは一定以上の参加者がいないと値がつかない」。十分な売買がないまま株価が決まれば、企業価値を測るものさしとしての信頼性にも影響する。

 さらに重要なのは、インサイダーなど悪質、違法な取引を見抜く監視体制だ。PTSでは取引所並みの審査機能は不要とされているが、横山氏は「市場の信頼性を確保する上でチェックは欠かせない」と課題に挙げる。

<メモ>私設市場(PTS)

 正式には「私的取引システム」。証券会社が運営する取引所で、総理大臣の認可が必要。当初は証券取引所の終値などを基準とする価格決定の規制があったが、昨年4月の法改正で証券取引所と同じ競売買方式(オークション)が認められた。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060806/mng_____kakushin000.shtml