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2006年08月05日(土) 00時00分

裁判傍聴サイト盛況読売新聞

「犯罪者の苦悩…人間ドラマ」「裁判長はメガネエリート」

 窃盗や殺人などの刑事裁判を東京・霞が関の東京地裁で傍聴し、その模様をインターネットで紹介するサイトが盛況だ。被告人のプライバシーにも配慮しながら、法廷で繰り広げられるドラマを臨場感たっぷりに伝えたり裁判官の訴訟指揮ぶりを採点したり。俎上(そじょう)に載せられる裁判官たちも、日々の書き込みに無関心ではいられないようだ。


東京地裁での裁判傍聴を終えた戸村さん(右)。「刑裁はうす」のメンバーと裁判の魅力を語り合った

 7月5日、東京地裁421号法廷。殺人未遂の罪に問われた高齢の男性被告の公判に、千葉市の会社員戸村靖さん(34)が足を運んだ。

 「ここで見ると、被告の表情まではっきり見えるんです」。戸村さんはそう言って、傍聴席の最前列に腰を下ろす。

 起訴事実を読み上げる女性検事。消え入りそうな声で「間違いありません」と認める被告。傍聴席の戸村さんは、その様子を詳細にノートにつづっていく。

 「作り物にはない臨場感が裁判の魅力。犯罪者の動機や生い立ち、苦悩。これ以上の人間ドラマはないです」

 戸村さんは4月中旬、「裁判傍聴愛好集団 刑裁はうす」というサイトを開設。会社員や主婦ら仲間6人が、時々集まって傍聴し、記録や感想をネットで公開している。

 殺人未遂の裁判を傍聴後、戸村さんはサイトにこう書いた。「いや〜霞が関の空気は美味(うま)い。ここに来ると心が落ち着くな。ここに来れば、様々な被告人や弁護人、検察官に裁判官が時には笑わせ、時には考えさせ、時には泣かせてくれる」

 今では顔見知りの判事や検事も増え、裁判所近くですれ違うと会釈を交わしたりするという。

裁判官も関心

 「おめかしをして、午後に裁判所に現れては、パンチのきいた事件を傍聴し、霞ヶ関駅構内の……」。こんな言葉で始まるサイト「霞っ子クラブの裁判傍聴記」。昨年11月に登場後、ユーモアを交えた文章が評判を呼び、1日2000〜3000件のアクセスがある。

 メンバーは、OLら女性4人。サイトには週に2、3度、新たな傍聴記がアップされる。今月には傍聴記録をまとめた本も出版される予定だ。

 「事件の裏側を知るのが大好き」「映画館に入る時みたいに、ワクワクした気持ちになれる」などというのが、彼女らが法廷を愛好する理由だ。

 「裁判長がメガネをかけてました。エリート男性のメガネって…いいですね」

 「今日は被告人の母親が情状証人で来ました。『田舎のおばあちゃん』といった感じの人です」

 裁判長の容姿や法廷でのやり取りが詳細につづられ、熱心な傍聴ぶりが伝わってくる。

 メンバーの一人は「新聞などで報道されないような小さな事件でも、『裁判だと面白い』と感じることがある。傍聴人の少ない裁判でも見逃せない」と話す。

 裁判官の中にも、これらサイトの熱心な“読者”がいるようだ。

 東京地裁の裁判官らが酒を飲むと、「霞っ子クラブ」のサイトで取りあげられた同僚の名前が話題になることがあるという。ある裁判官は、「彼女たちの視点はなかなかいい。一般市民が裁判をどう受け止めているかを知る上で貴重な意見だと思う」と話す。

人権に配慮

 「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」(文春文庫)などの著書があるフリーライターの北尾トロさん(48)は、「2009年には裁判員制度も始まり、裁判所に足を運ぶ人が増えるのは間違いない。ただネット上で傍聴記を公開する場合、被害者らのプライバシーに配慮することが必要だ」と指摘する。

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