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2006年08月03日(木) 00時00分

高齢家庭に窓口負担ずしり 医療制度改革、10月実施 東京新聞

 医療制度改革関連法が六月、成立した。高齢社会の中、国の医療費抑制を目指す内容だ。七十歳以上のお年寄りでも現役並みの所得がある場合は、十月以降、窓口での自己負担割合が二割から三割に増える(表参照)。療養病床に入院する際の食費・居住費も、原則としてすべて自己負担になる。高齢者家庭の医療費にどれほどの影響があるのか−。仮想の二組の夫婦のケースをもとに算定するとともに、厚生労働省の狙いや今後の課題を検証した。 (佐橋大)

 仮想のケース1は、七十代の池田さん夫婦。夫の一郎さんは、脳血管障害の後遺症で療養病床に入院。妻の静江さんは、高血圧と不整脈で、毎月二回通院する。夫婦の月収は二十三万円、医療保険で「一般所得者」に当たる標準的な世帯だ。

 十月以降、夫の入院先に支払う費用が、月六万三千六百円から九万六千十円へと三万円以上増える。食事の調理コストと居住費が、保険適用外になるためだ。

 昨年十月、介護保険型の療養病床の居住費などが自己負担になり、それとバランスを取るため一郎さんの入院先のような医療保険型も自己負担になるわけだ。

 静江さんの診察代と薬代の窓口負担は月千六十円。当面は据え置きだが、二〇〇八年四月には、七〇−七四歳の一般所得者の負担率が一割から二割になる。静江さんの窓口負担は倍増。〇八年度以降、池田さん夫婦の医療関係の支出は年間約四十一万円増となる。

 仮想2のケースは、やはり七十代の佐藤昭夫さん、和子さん夫妻。昭夫さんの年収は五百五十万円。窓口負担は一割だったが、八月から二割、十月以降は三割になる。

 七月までは、年収六百二十一万円を超える人がいないので、世帯の負担割合が一割の「一般所得者」だった。しかし、八月から自己負担の多い「現役並み所得者」になってしまったのだ。

 「現役並み」世帯は、課税所得額が百四十五万円以上の人のいる世帯。この定義は変わらないが、老年者控除の廃止などで、その下限が二人暮らし世帯で、年収六百二十一万円から五百二十万円に下がった。七〇歳以上の現役並み所得者の負担率が十月、二割から三割に上がる影響もあり、佐藤さんのような所得の世帯では、大幅な負担増加になってしまうのだ。

 昭夫さんは七月、よろけて右手前腕を骨折し、治療や検査などで初診で三千五百六十円を支払った。もし十月以降に同じ治療を受ければ一万六百八十円になる。

 ただ救済措置もある。「『一般』から『現役並み』になる人の高額療養費の一カ月の自己負担限度額は、二年間はこれまでとほとんど変わりません」と病院のスタッフ。

 自己負担限度額は、九月までの一般所得世帯が四万二百円で、十月からの現役並み世帯は「八万百円プラス加算分」。加算分は、総医療費から高額療養費の支給下限の医療費を引いた額の1%。例えば、佐藤さんが五十万円分の治療を受けたら、加算分は、五十万円から二十六万七千円(この金額未満では窓口負担が八万百円に届かず、高額療養費の対象にならない)を引いた額二十三万三千円の1%。つまり二千三百三十円になり、負担限度額は八万二千四百三十円になる。これでは家計への影響が大きすぎるので、限度額は「一般」の扱いになる。

 ただ、二年間だけの暫定措置。税金も上がり、高齢者たちの「大変だ」のため息が聞こえてくる。

 医療制度改革の最大の狙いは、膨らむ医療費を、社会が負担できる範囲内に抑えること。厚生労働省の試算では、医療費から患者の自己負担を除いた医療給付費は従来制度のままなら、二十八兆五千億円(二〇〇六年度見込み)から二五年度には五十六兆円に達する。これを、四十八兆円に抑制する。

 医療給付が増えるのは、医療費が現役世代の四倍以上かかる高齢者が増えるため。一方、高齢者の医療を支える現役世代は、団塊の世代の大量定年退職などで減り続ける。年金と同じ構図だ。

 「高齢患者の窓口負担の割合が増えると、公的医療給付は減少する」と厚労省は主張する。必要のない受診を抑え、世代間の不公平感を解消する狙いもある。

 二〇一二年三月までに療養病床を大幅に削減するのも給付抑制策の一つ。医療費を押し上げているとされる「社会的入院」の解消を目指す。介護と医療の役割分担を明確にし、医療行為の必要性の低い患者は、介護保険の施設に入所するか在宅介護に移ることになる。

 生活習慣病対策も給付削減策の一つ。重い病気にかかる前に、その芽を摘み取るのが狙い。〇八年度からウエストの測定などを診断項目に加えた健康診断を四十歳以上のすべての人に実施するよう健康保険組合などに義務化する。将来、心臓病や脳卒中になる可能性が高いと思われる人を抽出し、生活習慣の改善を指導する。

■地方も適正化5年計画作成へ

 地方にも抑制の責任を負わせた。国と都道府県は、生活習慣病患者の減少率、平均在院日数の短縮などの目標を盛り込んだ五年間の医療費適正化計画を作成する。計画終了時には達成状況を検証する。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060803/ftu_____kur_____000.shtml