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2006年08月02日(水) 00時00分

ネットで横行、テレビ映像の違法配信読売新聞


You Tubeに掲載されている動画の一覧画面。日本語のタイトルが付いたものや日本のアニメも目立つ

 「16年連れ添った相方がこういう形で報道されるのは、腹立たしいし、情けない……」。先月19日、日本テレビの朝の情報番組「スッキリ!!」の冒頭で、タレントの加藤浩次さんが、コンビの相方が起こした不祥事に対し、涙ながらに謝罪。加藤さん自身が司会を務める番組での発言だったため、事実上の独占映像となった。

 しかし、インターネット上の動画投稿サイト「You Tube」では、この映像は翌20日になっても、自由に見ることができた。サイト上に映像が出回っているのを日本テレビは19日昼ごろ察知。「明らかな著作権侵害」として、運営するYou Tube社に対して削除を要求した。映像は21日朝に削除されたものの、3日間で視聴された回数は300万回を超えた。

 「You Tube」は2005年2月に米国で開設されたサイトで、個人が投稿(送信)した動画を集め、誰でも無料で見ることができる。オリジナル動画の発表の場となる一方で、今回のようにテレビ映像を録画しただけの動画も氾濫(はんらん)し、事実上、著作権の無法地帯となっている。

 アニメ、音楽、ハプニング映像など、日本のテレビ映像が増えるにつれ、日本からのアクセスも急増。民間調査会社のネットレイティング社の調べでは、昨年12月に20万人だった月間視聴者数は、今年6月には516万人に達した。

 インターネットのブロードバンド化で、今はパソコンでも、テレビのような鮮明な動画が楽しめる時代になった。放送局や通信事業者により、ニュース、ドラマ、野球中継などがネット上で公開されている。しかし、大半はテレビ番組とは別の独自の素材。放送中の番組や過去の番組をネットで配信するには、出演者や作曲家らの権利者に、一つ一つ許諾を取らねばならない現状があるからだ。一方で、過去の映像を見たいという視聴者の欲求が、You Tubeの爆発的な人気につながっている。

 しかし、それが違法状態の下に行われているのは明らかだ。You Tubeは利用規約で著作権を侵害する投稿を禁じているが、毎日数万本単位で新たな動画が出てくる中で、違法動画をしらみつぶしにするのは不可能。テレビ局からは「チェックするための人員を配置するのはコスト的に難しい」(テレビ朝日ライツ推進部)などと、嘆きの声が聞こえてくる。

 個別の対応では追いつかない状況の中、NHKと民放各局などで構成する「地上デジタル放送推進協会」は、この秋、不正コピー対策に乗り出す。しかし、対象はオークションサイトに出回るDVDなどで、You Tubeに関しては「問題視してはいる」が、具体的な動きには至っていない。

 番組をネットで配信する「第2日本テレビ」の土屋敏男エグゼクティブディレクターは、こう訴える。「今回のYou Tubeの問題は、(ネットでテレビを視聴する人が多いという)現実を突きつけられた。過去の映像を正規に出せば、我々も権利者もビジネスになる。権利処理のルール作りのスピードを上げていかなければ」

 テレビ局や出演者らが著作権問題への取り組みに足踏みしている間に、無法地帯のサイトに視聴者が流れていくことは皮肉でもあり、大きな損失でもあるだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20060802nt09.htm