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2006年08月01日(火) 00時00分

絵本の「読み聞かせ会」にも許諾が必要読売新聞

 絵本の読み聞かせやお話会でも、作者の許可がいるの?

 ボランティア活動をしている人々の疑問に答える「読み聞かせ団体等による著作物の利用について」という手引が、今年5月に公表された。作成したのは絵本の著作者、出版社の4団体で作る児童書四者懇談会。

 同会の植村和久座長は、「この数年、ボランティア団体の読み聞かせ運動が盛んになっている。その中で絵本を手書きで拡大したり、紙芝居化する使われ方は嫌だ、という著者も出てきた」と趣旨を説明する。

 手引では、そうした活動に使われる絵本にも「作者の著作権がはたらいている」として、もとの絵本を改変したり、実演者に交通費を超える報酬が出る場合などは、ボランティアでも作者の許諾が必要だと、著作権法に沿って詳細に説明している。

 利用者から問い合わせが多くなる中で、あくまで「利便性を考えた」はずだった。しかし、窓口の日本書籍出版協会には、数百件の問い合わせが殺到。「読書の楽しさを伝えるため善意の活動を委縮させないか」との声は、関係者を戸惑わせた。

 利用者代表として手引に助言した親子読書地域文庫全国連絡会の広瀬恒子代表は、「この手引によって著作権を初めて意識したボランティアも多く、勉強しなければという機運が高まった。あいまいだった点が明確になったのはいいこと」と評価する。

 一方、日本図書館協会の常世田(とこよだ)良理事は、「大半の活動は問題ないはずなのに、一般の人に読み聞かせが“違法”のような印象を与えないか心配。読み聞かせ会には、将来の読者を育てる効果もある」と疑問を投げかける。

 仙台市で20年来、読み聞かせを続ける絵本店経営者の横田重俊さん(57)は、主催者からまれに1万円程度を渡されることがある。今回の手引を受け、その金額が許諾が必要な報酬にあたるのか、出版社十数社に問い合わせた。「大半の社は、許諾はいらないとのことだったが、毎回申請を欲しいとの回答も2社あった。許諾を取る手間を考えて、その出版社の本は使わないようにした」と話す。

 著作権意識が高まるにつれ、こうした教育面で、利用者との関係が議論となる事例が目立つ。顕著なのは、教科書に準拠したドリルや、入試問題集だ。

 著作権法では、教科書や試験については著作者の許諾はいらないと定めるが、準拠ドリルなどには適応されない。このため、著作者と話し合いがつかないで出ているドリルなどの場合、国語の長文読解問題の設問だけを載せ、肝心の長文は教科書を見て答えさせるものまで出てきた。こうした不完全な準拠ドリルは、学習意欲をそぐことにもなりかねない。

 筑波大大学院の山本順一教授(知的財産法)は、「著作権が、子供たちの教育を受ける権利を阻むのは好ましくない。権利者側の利益とのバランスを取った法律改正が必要だと思う」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20060802nt07.htm