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2006年07月30日(日) 10時57分

大阪の病院、赤ちゃん延命中止 治療より「看取り」産経新聞

≪死期迫り7年で8人≫

 大阪市東淀川区の「淀川キリスト教病院」(石田武院長)が昨年までの7年間で、重い病気で死が避けられないと判断した赤ちゃん8人について、両親の希望を受けて延命治療を中止していたことが29日、分かった。同病院は、親が赤ちゃんを抱っこするなど「最後に親子一緒に過ごせる時間をつくってあげたい」としている。

 法的に問題ないが、本人の意思確認ができない赤ちゃんの終末期医療をめぐって今後論議が深まりそうだ。

 同病院は平成10年10月、無脳症などの致死的障害や末期の脳室内出血などを検討対象とする赤ちゃんの終末期医療に関する指針を作成。11年から昨年までに指針に基づき対応したケースを集計したところ、死亡した赤ちゃん約70人のうち、人工呼吸器も含めすべての延命治療を中止したのは8人だった。

 いずれも新生児集中治療室で積極的治療を受けたが、複数の医師が回復不可能と判断。余命が「数十分から1、2時間」とみられる時点で両親の希望を受け、治療を中止した。

 治療中止に至る両親との話し合いには、看護師やソーシャルワーカーなども立ち会い、医療チームを組織して何度も議論を重ねる場合もあったという。

 また、苦痛の除去など一部を除いて新たな治療を差し控え、家族との時間を尊重する「緩和的医療」の対象となった赤ちゃんが57人いた。

 同病院は「親に子供の死を受け入れてもらえる時間をつくってあげたいという『看取りの医療』を実践してきた。『別れの儀式』という意味合いもある」としている。

 同病院は昭和30年に診療所として開設。宗教法人「在日本南プレスビテリアンミッション」が運営する。末期がん患者の終末期ケアを行うホスピスを国内で先駆的に導入した病院として知られる。

≪「親が意思決定」賛否両論≫

 淀川キリスト教病院の赤ちゃんへの延命治療中止は、厚生労働省のガイドラインにのっとった手続きで、法的に問題はない。

 だが、新生児の終末医療については論議がまだ十分ではないのも事実。親が子に代わって意思決定することは、一歩間違えば「生命の切り捨て」につながりかねず、識者から賛否両論が出ている。

 医療技術の進歩で、かつては救えなかった超低体重児も救命できるようになった一方、死が避けられない赤ちゃんにどこまで治療を続けるかの問題がクローズアップされてきた。

 新生児集中治療室での積極的な治療が赤ちゃんに苦痛を与える場合もあり、延命より苦痛の除去を重視する緩和ケアが、日本でも広がりつつある。

 一方で、日本小児科学会倫理委員長の谷澤隆邦兵庫医大教授は「成人では回復が見込めない症状でも、新生児なら回復の可能性がある。判断は極めて難しい」と指摘する。

 「障害者を普通学校へ」運動などを展開している作家で小児科医、毛利子来(たねき)さんはこう提言する。「どんな重度の障害を持って生まれても、その子は懸命に生きようとしている。今後このような風潮が強まれば、障害者を社会から排除する思想にもつながりかねない。医療現場はもっと、延命治療について真剣に悩むべきだと思う」

 親の立場もさまざまだ。先天性水頭症の患者団体「日本水頭症協会」代表の山下泰司さん(41)は「私は重症新生児への延命治療拒否は絶対ノー。生まれてくる子の命を奪う権利は、親といえどもない」。

 その一方で、「ただ、親にもさまざまな考えがあるだろうし、最終的には個々の判断だ。同じ立場の親たちには『一緒に頑張ろうよ』と伝えたいが…」と複雑な胸の内を明かす。

 谷澤教授は「今回のケースは病院関係者や両親が十分に話し合った上での決断のはず。それがよかったかどうかは、関係者の哲学の問題だ」と話している。

【2006/07/30 東京朝刊から】

(07/30 10:57)

http://www.sankei.co.jp/news/060730/sha054.htm