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2006年07月30日(日) 00時00分

赤ちゃんの延命治療中止 大阪の病院で8人 中日新聞

 大阪市の淀川キリスト教病院が2005年までの7年間に、治る見込みがない重い病気で死期が迫った赤ちゃん8人について、「あと1、2時間以内」と判断した時点で両親の希望を受けすべての延命治療を中止していたことが29日、病院のまとめで分かった。

 親が赤ちゃんを抱っこして安らかな最期を迎えられるようにするためで、同病院の船戸正久小児科部長は「治療よりケアを重視し、親と一緒に過ごす時間を最大限、大切にすることを『看取(みと)りの医療』と考えている。赤ちゃんにとって一番よい選択を両親と話し合うことが大切」としている。

 赤ちゃんの終末期医療をめぐっては、本人の意思確認ができず治療中止は難しいとの指摘がある一方で、過剰な延命治療を見直す動きも広がっている。新生児医療に携わる病院の85%が差し控えや中止を経験しているとの調査結果もある。

 淀川キリスト教病院は1998年10月、無脳症などの致死的奇形や末期の脳室内出血などを検討対象とする、赤ちゃんの終末期医療に関する指針を作り、倫理委員会が承認。99−05年に指針に基づき対応したケースを集計したところ、死亡した約70人のうち、人工呼吸器も含めすべての延命治療を中止したのは、重い脳室内出血などを起こした末期の超低出生体重児ら8人だった。

 いずれも新生児集中治療室(NICU)で積極的治療を受けたが、複数の医師が回復不可能と判断。余命が「数十分から1、2時間」とみられる時点で両親の希望を受け、治療を中止した。

 医師が点滴や呼吸器のチューブを「抜いてあげましょうか」と尋ねることもあれば、親の側から「抜いてください」と言うケースもあった。

 ほかに、苦痛の除去など一部を除いて新たな治療を差し控え、家族との時間を尊重する「緩和的医療」の対象となった赤ちゃんが57人いた。

 治療方針は看護師やソーシャルワーカーも含む医療チームで議論し、両親とも話し合いを重ねて決定しているという。

 同病院の指針は「看取りの医療」について「医学的介入を中止し家族全員に赤ちゃんと納得がいくまで過ごしてもらい、看取りの場に立ち会ってもらう。希望があれば宗教家も立ち会い、大切な『別れの儀式』の時を持ってもらう」としている。

 <赤ちゃんの終末期医療> 医療技術の進歩でかつては助けられなかった超低出生体重児も救命できるようになる一方、死が避けられない赤ちゃんにどこまで治療を続けるべきかが倫理的問題となっている。新生児集中治療室(NICU)での積極的な治療が赤ちゃんに苦痛を与える場合もあり、延命より苦痛の除去を重視する緩和ケアの考え方が日本でも広まりつつある。人工呼吸器など生命維持処置の中止も含め、治療方針が医師の独断で決められがちとの医療現場の問題点も指摘されている。

◇第三者の意見を

 元大阪地裁判事で生命倫理に詳しい稲葉一人・東大大学院客員研究員の話 死が確実で治療のすべがなく、余命も数時間と死期が極めて迫っている場合には、両親の希望で呼吸器を取り外しても法的に罪に問われることは通常ないと考えられる。親は子の生き方と同様、死の迎え方についても親権に基づき一定の選択、決定権を持っているが、乱用されないようにするのも医療者の役割だ。治療を継続すべきとの医学的判断に反して親が中止を望むようなケースもあり、延命治療を中止する場合は医療現場だけで判断せず、第三者の意見を聞く努力が求められる。


http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20060730/mng_____sya_____006.shtml