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2006年07月30日(日) 01時56分

7月30日付・読売社説(1)読売新聞

 [個人情報保護法]「運用の見直しだけでは済まない」

 「個人情報は隠すべきもの」という誤解が蔓延(まんえん)している。早急に是正しないと、社会がますます不健全になる。

 個人情報保護法の見直しを進めている国民生活審議会の個人情報保護部会が、個人情報の“過剰保護”や民間事業者の取り組みなど幅広く検討課題をまとめた。来年夏に保護部会としての見解をまとめる。

 昨年4月の法施行以来、「過剰反応」による行きすぎた保護が目立つ。

 事故など緊急時に病院が家族や警察の問い合わせに応じない。緊急連絡網や卒業アルバムがなくなった学校もある。地方自治体では高齢者や障害者ら「災害弱者」の名簿作りが進まない。

 神奈川県は、住民に「個人情報を保護するとともに有益に利用しよう」と呼びかける手引を作った。こうした過剰反応対策をとった自治体は、まだ全体の2・6%に過ぎない。

 過剰反応を防ぐには、まず法の解釈を明確にし、医療や教育など分野別に各省庁が出しているガイドライン(指針)の周知徹底を図る必要がある。

 関係15省庁は2月末、過剰反応防止へ対策を強化することを申し合わせたが、十分効果を上げているとは言えない。運用の見直しでは限界があるだろう。

 中央省庁や地方自治体の行政情報にも問題が続出している。

 人事異動の際に幹部職員の最終学歴や生年月日を公表しない。懲戒処分を受けた職員の氏名や元職員の再就職先を伏せる——といったケースが少なくない。

 「行政機関個人情報保護法」が、個人情報の目的外利用を禁じていることや本人の同意がないことなどを、公表しない理由としている。

 日本新聞協会は「個人情報の保護を理由に情報の隠蔽(いんぺい)が進んでいる」と指摘している。これでは報道機関は、行政を監視できない。行政の透明化を目的とした情報公開法の趣旨にも反している。

 日本弁護士連合会は、具体的な法改正案を提案した。個人情報の種類や利用目的などによって、保護するよりも情報を提供する方が利益が大きい場合は、個人情報を提供出来るようにする。個人情報保護法には、そんな条文を加える。

 行政機関個人情報保護法でも、職務遂行に関連した公務員の氏名などの個人情報は、情報提供を制限する条項の例外とするよう求めている。

 今後の議論の焦点の一つになろう。

 「過剰反応」は、啓発やガイドラインの見直しだけで解消される問題ではあるまい。法改正を前提として、具体案の検討を進めるべきである。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060729ig90.htm