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2006年07月28日(金) 00時00分

有害・娯楽サイト 規制、コツコツ手作業朝日新聞

 学校や企業でインターネットの有害サイトや娯楽サイトなどの利用を規制する「フィルタリングソフト」の利用が増えている。ジャンルを指定するだけで閲覧を遮断できる機能の裏には、目でサイトの内容を確認して分類を続ける「番人」たちの活躍がある。

 仙台市中心部のビル。佐藤幸さん(34)が毎朝、職場についてパソコンの電源を入れると、すぐに約20件のサイトのURL(住所)が示される。機械が選んだ、新着アダルトサイトの「候補」だ。

 クリックすると、「もう見慣れてしまった」という、おびただしい数のヌード画像。手慣れたマウスさばきで、こうしたサイトを「違法と思われるサイト」、「性行為」「ヌード画像」「水着・下着・フェチ画像」などと分類して登録してゆく。感覚はマヒしがちだが、基本にあるのは「子どもに見せられるか」という社会通念だ。

 同じ部屋では同僚25人が黙々とパソコンに向かう。職場は女性ばかり。「どんなサイトも冷静に判断し続けるのに向いている」ためだ。

 この会社「ネットスター」(本社・東京)はフィルタリングソフト国内最大手のアルプスシステムインテグレーションとウイルス対策大手のトレンドマイクロが合弁で01年に設立。両社のソフトで規制するサイトを収集している。

 最近急増して佐藤さんたちを悩ませるのが、アダルト画像で誘い込み、閲覧した人に法外な料金を請求する「ワンクリック詐欺」のサイト。手口が警戒されていると見るや、すぐに芸能人のゴシップ情報についてのブログを装った別の「入り口」が現れる。「こちらも素早く追いかけているつもりですが、いたちごっこです」とため息だ。

 官能小説などのサイトの場合は、「専門用語」が飛び交って調べるのにも時間がかかる。出会い系サイトに書き込まれる「(1)」「(3)」といった丸数字は、読み進めると売春の代金交渉の値段と気づく、といった具合だ。一方、新しく分かった言葉を使って検索すると、これまで分類できていなかったサイトが発掘できる場合もあるという。

 ソフトは企業などで私的利用を禁じる目的にも使われるため、収集対象は有害サイトに限らない。投資・利殖といった「金融」、オークション・通販などの「ショッピング」、音楽・タレント関連の情報を含む「趣味」、さらには「転職・就職」も。全72分野に及び、国内全サイトの3割がいずれかの対象となるほど守備範囲が広いため、「なるべく教養の広い人を採用する」(同社の高橋大洋・マーケティング部長)。

 1人が1日に処理できるのは約100サイト。数十万台のコンピューターが自動で世界中のサイトの索引を作るグーグルのような検索エンジンとは対極の「人海戦術」だが、それが使い勝手の良さにつながるという。

 佐藤さんは会社の設立時から携わる。この間、ネットの用途が大きく広がってページ数も右肩上がりを続け、分類したサイトは4000万を超えた。つらいのは惨殺された死体のようなグロテスクな画像を目の当たりにする際。「お客さんが見ないで済む分を私たちが引き受けているので……」

 親会社のソフト売り上げは年に倍以上の伸びが続く。7月からは顧客に提供するデータの更新頻度が1日1回から3回に増えた。進化するネット社会の「混沌(こんとん)」が、番人たちを駆り立てる。

    ◇

 警察庁が昨年11〜12月に6都県の中学・高校生2271人を対象に実施した調査では、パソコンや携帯電話を使ってわいせつな画像を「見たことがある」としたのは全体の25%。高校生男子に限ると、約半数の49%が「見たことがある」と答えた。残虐な画像を見たことがあるのは全体の14%だった。一方、保護者にフィルタリングソフトやサービスについて尋ねると、「知らない」が58%で、浸透していないことが浮き彫りになった。

http://www.asahi.com/digital/internet/TKY200607280572.html