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2006年07月27日(木) 00時00分

米産牛肉輸入再開へ 不安と不信しぼむ流通 東京新聞

 政府は二十七日、米国産牛肉の輸入再開を再び決定する。ことし初め、米国の輸入牛肉に背骨が見つかり、再び輸入を禁止してからほぼ半年ぶり。だが、牛丼の復活など昨年十二月の輸入再開時のような盛り上がりはなく、静かなスタート。むしろ、安全性への疑問は膨らみ、小さな期待と大きな不安を抱えた輸入再開となる。 (経済部・川上義則)

■説明

 「もう一度(米国産牛肉の輸入で)失敗があれば(日本市場は)完全封鎖になる」

 二十六日、東京・永田町の自民党本部の一室。六−七月に行った米国の対日輸出施設の事前査察について、厚生労働省と農林水産省の担当者が説明したのに対し、党小委員会のメンバーは時折、大きな声でただした。

 両省の調査で昨年十二月の輸入再開時、米政府の承認前に処理した牛肉が輸出されていた事実が判明。しかし、両省は承認前に処理した施設も条件を付けた上で、今回の輸入再開を認める方針を示した。

 この説明に党側は納得せず、午前中始まった小委員会は結論を一時保留にした。

 同日夕に再開した小委員会で、両省は承認前に処理した牛肉が既に国内に流通していたことなど詳細に説明。党側も矛を収め、三十四施設の輸入再開を了承した。

 十一月に中間選挙を控えた米国の与野党議員の圧力でこじ開けられた印象が強い今回の輸入再開。消費者の不信感の高まりは昨年の再開時をはるかに上回る。

■注文

 消費者の意向を気にする自民党側が両省に注文を付けた案件がもうひとつある。昨年十二月の再開以降に国内に届きながら、輸入停止措置のあおりで港の保冷庫に留め置かれた未通関の牛肉約八百三十トン、八億円相当の取り扱いだ。

 両省は輸入再開後ただちに検査を始め、国内に流通させる方針だった。しかし、党側は未通関の牛肉の輸入を認める前提として、今回の輸入再開が問題なく進むかどうかの確認を求めた。様子見の期間は国内入荷開始から三カ月程度を想定しており、早くても十一月中旬ごろになりそうだ。

 「なぜ、われわればかりが損害をかぶるのか」

 国内の専門商社でつくる日本食肉輸出入協会の担当者は自民党の措置に頭を抱える。未通関の牛肉は買いたたかれて損害が出る。その上に輸入が三カ月も延長されると賞味期限が切れ、損害はさらに拡大する。協会は米国政府に買い取りを要請したが、あっさり拒否された。

 小売りや外食業界の多くは、疑心暗鬼が増幅し輸入再開後も米国産牛肉の販売に慎重だ。その結果、輸入を手控える業者はさらに増え、国内の流通量は極めて少なくなりそうだ。

■影響

 輸入業者の動向は、輸入再開に期待する業界にも影響する。

 牛丼チェーンの吉野家ディー・アンド・シーは、米国産牛肉の輸入再開から一カ月半−二カ月後、メニューに牛丼を復活させる方針。ただし、牛丼に使うバラ肉は割高で量も少なく、時間または期間限定で販売する。吉野家は以前、米国の食肉会社から直接買い付けも行っていた。再開後は日本向けの特別仕様となるため米国の食肉会社はバラ肉だけの販売は行わず、吉野家も輸入業者を通じて買い付ける。米国産牛肉を取り扱う業者が少なければ、調達量も限られ、販売期間に影響する。

 焼き肉業界は、輸入再開で高止まりしているタンの価格下落を期待していた。しかし、流通量が少ない場合、価格が下がることは考えにくい。

 昨年十二月は東京都内で米国産牛肉のPRイベントを開催した米国食肉輸出連合会は今回、開催を見送る。担当者は「地道に米国産牛肉の良さを伝えていく」と長期戦の構えだが、流通量を回復させる道は険しそうだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060727/mng_____kakushin000.shtml