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2006年07月26日(水) 00時00分

耐震診断工業高におまかせ 「耐震チェック講座」でパソコンの耐震ソフトに参加者の住宅データを入力する建築科の生徒=千葉県市川市の市川工業高校で 東京新聞

 木造住宅の耐震診断に取り組む動きが、各地の工業高校建築科に広がりつつある。3年前から先駆的な活動をしてきた千葉県立市川工業高校(市川市)の呼びかけに応じ、都立校の一部などが今年から、診断活動に乗り出す。建築科を卒業する生徒は全国で毎年約1万人。その力が、地域の防災力アップに期待を集めている。

 「壁材は何を使っていますか」「ここに柱はありますか」−。生徒たちが参加者に質問しながら、パソコン画面の耐震診断ソフトにデータを入力していく。市川工業高校で今月二十一日、授業の一環として開かれた「木造住宅耐震チェック講座」。市民七人が参加し、自宅の耐震診断に取り組んだ。

 夫と参加した市内の女性(69)は「築二十七年の家に住んでいるので、補強工事をする必要がある。でも、診断してもらう業者が信頼できるのか疑心暗鬼になり、工事への『入り口』がなかった。こうした機会があると本当にありがたい」と喜ぶ。

 建築科の菊池貞介教諭は「耐震診断に『いくらかかるのか』『誰に頼めばいいのか分からない』という理由で踏み出せない人が多い。高校生たちが『勉強のために診断させてください』と頼むことで、チャンスができる」と強調する。

 同校が耐震診断に取り組み始めたのは、二〇〇三年春。元造船会社エンジニアで日大理工学部講師(海洋建築)の八島信良さん(62)=同県船橋市在住=が「退職後の社会貢献として、木造住宅耐震工事の普及に取り組みたい」と菊池教諭に手紙を出したことがきっかけだった。耐震設計の専門知識がある八島さんの協力により、三年生で五単位の授業を始めた。

 授業では耐震の基礎理論から学び、夏に耐震ソフトを使った公開講座を実施。秋には実際に住宅の調査に出向き、診断の手伝いをする。これまでの三年間で延べ四十六人の生徒が履修し、三十七棟の住宅を無料で実地調査した。昨年度からは自治会と連携した「町内まるごと耐震診断」も実施。居住者の心理的負担が大きい屋内調査をせず、外観調査を中心に危険度の高い物件をピックアップしている。

 菊池教諭は昨年夏、東日本の工業高校建築科教諭が集まる会合で「耐震診断の取り組みを広げたい」と呼び掛けた。その結果、都立葛西工と田無工、群馬県立藤岡工、滋賀県立彦根工の各校が今年から診断活動を始めることになった。

 二十一日の公開講座には、田無工建築科の生徒五人も参加し、耐震ソフトの使い方などを学んだ。同校二年の瀬川直也君(17)は「難しいですが、今から覚えたい。将来は構造計算の仕事をしたい」と話す。

 生徒たちには建築士の資格がないため、診断結果はあくまで「(専門家が診断してくれる)『大学病院』に行ったほうがいいのか、そうでないのかを判断するためのもの」(菊池教諭)。それでも、遅々として進まない地域の耐震診断・補強を後押しする力は大きい。生徒指導に協力してくれる専門家との連携などが、さらに多くの高校に活動を広げるための課題だという。

 菊池教諭は「工業高校の生徒たちは、大学に進学した後も就職して地域に戻る率が高い。全国に二百四十五校ある建築科の卒業生が、地域で防災の担い手になってほしい」と話している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20060726/mng_____thatu___000.shtml