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2006年07月26日(水) 01時42分

7月26日付・読売社説(2)読売新聞

 [日経社員逮捕]「情報管理の甘さに問題があった」

 日本経済新聞の社員が、その立場を利用して株取引をし、私腹を肥やしていた。報道機関の信用を傷付ける行為だ。

 東京地検が、日経新聞広告局の社員を証券取引法違反(インサイダー取引)容疑で逮捕した。昨年12月から今年1月にかけて、社内でつかんだ未公表の企業情報をもとに、上場5社の株を購入して売り抜け、約3000万円もの不正な利益を得ていたという。

 インサイダー取引は、適正な株価をゆがめ、証券市場の公正さを損なう。横行すれば投資家を市場から遠ざけてしまう。この社員は、日経新聞に持ち込まれた公表前の「法定公告」から、情報を入手していた。

 法定公告は、株式会社が新株発行や株式分割、決算などの重要事項を官報や日刊紙に掲載して投資家らに周知するものだ。商法で義務づけられた公共的性格の強い広告と言える。

 当然ながら、株価に影響を与える重要事実であることが多い。日経新聞の社員が目をつけた株式分割は当時、公表されれば株価上昇につながるとされていた。ライブドアも多用した手段だ。

 このため、法定公告には秘密厳守が求められている。しかし、日経新聞の社内では、広告局員であれば、掲載前に、共用コンピューターで公告の内容がわかる仕組みになっていた。情報の管理がずさんだったということだろう。

 昨年6月には日経新聞の取引先である「日本経済広告社」の営業局長が株式分割の法定公告を悪用したとして、証券取引等監視委員会からインサイダー取引で告発されている。

 日経新聞はその後、社員向けに法令順守の講習会を開いたり、不明朗な株取引を禁じる内規の小冊子をつくって広告局の社員に配ったりした。講習会には今回逮捕された社員も2度出席していた。

 だが、インサイダー取引を食い止めることはできなかった。問題の社員は社内調査に対し、違法な行為だとは思っていたが、「ゲーム感覚的なところがあった」と話したという。講習会や小冊子は効果がなかったことになる。

 今回の事件の発覚を受けて、日経新聞は今年2月、広告担当常務の辞任や広告局長らの解任、全取締役の減俸などの処分を実施した。編集、販売、広告の各局社員に対しては、株取引を全面的に取りやめるよう要請した。

 多くの情報が集まる報道機関には、厳しい情報管理や法令順守の姿勢が求められる。報道機関の関係者は、読者や視聴者の信頼を損なわないように、身を律しなければならない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060725ig91.htm