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2006年07月24日(月) 00時00分

『香辛料殺菌に 放射線照射を』 東京新聞

 コショウ、ワサビなど家庭の食卓にものぼる香辛料に、殺菌のため放射線を照射できるよう検討すべきだ−とする報告書案を、内閣府原子力委員会の食品照射専門部会が今月中旬まとめた。放射線利用推進の立場からの動きで、秋にも正式決定して厚生労働省に通知され、同省が判断することになる。消費者団体からは「必要性も緊急性もなく、安全性にも問題がある」と強い反対の声が上がっている。 (鈴木久美子)

 報告書案がまとめられた今月十三日、日本消費者連盟など全国の消費者団体三十団体が結成した「照射食品反対連絡会」は、原子力委員会に照射を進めることに反対する申し入れを行った。

 「原子力を推進するために放射線利用を食品にまで広げることは、食のあるべき姿を阻害する」と同連絡会のメンバーで日本消費者連盟の富山洋子さんは訴えた。

 「食品への放射線照射は有用性がある」。報告書案はそう指摘している。▽殺菌や殺虫、発芽防止の技術の一つとして有効▽同じ目的で化学薬剤を利用する方法は、薬剤の毒性などが指摘されるようになり、代替技術が求められている−などが理由だ。

 さらに、香辛料への放射線照射について▽諸外国で許可の実績がある▽安全性に関して国内外の研究成果が出ている▽国内の業界からも使用したいと要請がある−といった点を挙げ、「意義が高く、検討するのが妥当」とした。

 日本ではこれまで、食品への放射線の照射は食品衛生法により原則禁止されている。ただ例外として一九七二年から、ジャガイモの発芽防止にのみ認められてきた。

 今回の報告書案は、従来の原則そのものにかかわってくる問題。そもそものきっかけは昨秋、国の原子力利用の基本的な考え方を示した「原子力政策大綱」。放射線照射を「多くの国で実績のある食品については検討することが重要」などと盛り込まれ、昨年十二月に設置された部会で検討されてきた。

 食の安全にかかわる問題について、本来管轄する厚生労働省ではなく、「放射線利用推進の立場から」(内閣府原子力政策担当室)議論が出発したのも異例だ。

 そうした経緯も含め、反対連絡会は「照射食品の安全性は十分に確認されていないし、照射されたかどうか検知する技術も確立していない」と危険性を指摘。さらに「香辛料を突破口に、次々と別の食品に許可される恐れもある」と警戒を強めている。

 一方、スパイスメーカーが加盟する全日本スパイス協会は、報告書案を「照射が許可されれば、殺菌法の選択肢が増える」と歓迎。「照射の安全性は国際的に認められている。実施規模が大きくなれば、殺菌のコストも下がるだろう。消費者に理解していただければ…」。同協会は二〇〇〇年、「蒸気を当てる現在の殺菌方法では、香辛料の香りなど質を損ねる」などとし、照射を許可するよう国に要請している。この時は、消費者団体の反発も強く、厚労省も検討に至らなかった。

 今回の報告書案について、厚労省は「国民の需要がなければ照射の許可はできない」とし、当面は今後の報告書のとりまとめを見守る方針だ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060724/ftu_____kur_____000.shtml