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2006年07月23日(日) 11時55分

売買お任せカブロボ・夜間取引 進化するネット証券朝日新聞

 朝、家を出る前にパソコンで株取引の自動発注ソフトを起動する。帰宅すると、何件かの売買で利益が出ていた——。ネット専業のマネックス証券は来年、こんなソフト「カブロボ」を発売しようとしている。

 ソフトは、早稲田大学系のベンチャー企業と同社が来月から開く「第1回スーパー・カブロボ・コンテスト」に一般投資家が寄せたものから選ぶ。応募は5000本以上になる見込み。実際の相場の動きを映した仮想市場で5000万円を運用して、性能をテスト。収益性や安定性で数本を選び、手ごろな価格で売り出す。

 過去2回の実験的なコンテストでは、1位の利益率は年率換算で828%。100万円が1年で928万円になる計算だ。値動きの荒い銘柄の「売られすぎ」の兆候をつかみ、買ったその日に売り抜ける。

 今回のコンテストに挑む都内の会社員蒲田晋吾さん(42)も、パソコンによる投資の自動化を夢見る1人。株を始めたのは1年前。手早くもうけようと、リスクの大きなデリバティブ商品や新興企業株を買った。元手の20万円は上げ相場もあって今年1月に約100万円になった。だが、直後のライブドア事件で急変。動転するうちに売り時を逃し、2月には8万円まで減っていた。

 5月半ばからの世界的な株安にもやられた。2回も大やけどをして、「機械任せで人間以上の利益が出せるなら、こんな楽なことはない」と思い始めた。

 一昔前、証券会社の窓口や電話での注文がもっぱらだった個人の株式投資をネット証券が一変させた。今年3月の1カ月だけで、ネットの株式売買代金は27兆円。6年前の23倍だ。個人投資家の売買代金は市場全体の約3割を占め、ネット取引の口座数は同月末に1千万件を超えた。

 ブロードバンド(高速大容量通信)の普及もあって、パソコンをネットにつなぐだけで、家庭や職場で簡単に売買できる仕組みが広がった。競争の結果、ネット専業証券の手数料は大手証券の店頭手数料の1割程度に下がった。そこに新たな旋風を巻き起こそうとしているのが、GMOインターネット証券だ。

 「株価情報はヤフーなどを見て下さい。我が社は発注システムだけを安く提供します」。同証券の親会社、GMOインターネットの熊谷正寿社長は今年4月の記者会見でこう言い放った。提供するのは、他のウェブサイトと重ねて見られる小さな発注画面だ。

 ライバルは「コバンザメ商法」と吐き捨てるが、社員わずか36人のコスト削減もあって、手数料は業界最低水準。9月までの割引期間中は、売買高20万円までの注文は1回税込み80円、50万円まで同300円だ。

 ネットは、時間の壁も超えようとしている。カブドットコム証券は8月にも、国内初のオークション方式の夜間取引市場を開設する。ネット利用の私設証券市場だ。

 同社に口座を開いたばかりの奈良県大和郡山市の男性会社員(30)は「非常に興味がある。ぜひ、夜間取引をしたい」と期待を寄せる。投資歴は2年。自宅の購入資金を増やそうと、蓄えのうち約700万円を運用している。

 だが、今までは勤めから帰って注文を出しているので、買い時を逃したり、高値づかみしたりすることがたびたびあった。夜間取引なら、リアルタイムで値動きを見ながら注文を出せるので、失敗取引が減るのでは、と期待している。

 こうした過熱ぶりは、「投資とは何か」という問いも発している。1日に数十回の売買を繰り返し、億単位の資産を作るデイトレーダーがいる一方、ライブドア事件による同社株の暴落で子供の教育資金や退職金など虎の子の資産をガタ減りさせた人も相次いだ。

 投資は本来、会社という実体に資金を供給して成長の果実を得る行為のはずだ。しかし、ネット取引はとかく、株価という数値の動きに注目しがち。それは「博打(ばく・ち)」に、むしろ近い。

 ネット証券の収益の原動力は、少ない元手で大きな売買ができる信用取引の大衆化だった。買った株を証券会社に担保として預け、その額の数倍の売買ができる投機性の高い取引だ。相場が急落すると通常の取引と比べものにならない多額の損失を被る。投げ売りなどを呼び、相場も大混乱する。これはライブドアショックで現実になった。

 信用取引で買った株式の含み損益を示す信用評価損益率は今もマイナス16%を超え、今年最悪の水準に近い。相場急落を増幅しかねないマグマだ。

 運用歴30年のある機関投資家はいう。「バブルの時代に信用取引の短期売買に走った投資家は、バブル崩壊で没落した。目先しか見ない投資は、経済の大きな変化で強烈な打撃を被りやすく、成功より失敗の確率の方が高い」

http://www.asahi.com/business/update/0723/003.html