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2006年07月20日(木) 01時33分

7月20日付・読売社説(1)読売新聞

 [パロマ事故]「企業も行政も『安全』を忘れていた」

 安全という最も肝心なことを考えたことはあったのか。

 ガス器具製造販売の大手、パロマの瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒の事故が、次々と明らかになっている。

 パロマが公表した最新の数字では、1985年からの21年間に27件発生し、死者は20人に上る。

 遺族らには「ほかにも隠しているのではないか」と疑念の声も出ている。そう見られるのも当然だ。

 問題が発覚したのは14日だ。経済産業省が、パロマの湯沸かし器で17件の事故があり15人が死亡したと発表した。

 パロマも同じ日に会見したが、「製品には問題はない。不正改造が原因」だとして、利用者や修理業者に責任があるかのような姿勢に終始した。「把握していた事故は7件だけだった」とか、「最初に事故を知ったのは91年だった」などとも説明した。

 これがまったくのでたらめだった。その無責任さには、あきれ返る。

 パロマは18日になって、改造された製品の事故もあったが、安全装置の品質劣化による事故が含まれていることも認めた。製品自体に不備があったわけだ。事故情報はそのつど警察から連絡が入っていて、80年代から承知していた。

 20年以上もの間、顧客には事故の情報や改造の危険性を隠し続けた。一つ一つの事故を深刻に受け止め、原因などをきちんと調べることもなかった。

 事故が起きたのは、80年代に製造された機種だ。24万台が販売されている。ようやくパロマは19日、該当製品の点検と修理・回収に乗り出した。それが済むまで使用しないよう呼びかけている。

 あまりにも遅すぎた対応だ。家庭で日々使われる必需品である。パロマ経営陣の安全軽視が、取り返しのつかない結果となった。

 経産省の責任も重い。旧通産省時代も含め、パロマから何度か事故の報告を受けながら、公表することもなく、何の手も打たなかった。

 今回、経産省が動いたのも、東京都内で起きた死亡事故について業務上過失致死容疑で捜査を始めた警視庁から、「同様の事故が起きる懸念がある」と通知を受けたからだ。

 事故情報を受ける窓口も都市ガスとLPガスで担当課が分かれ、湯沸かし器の担当は、さらに別の課だった。情報は共有されず、国民の安全を守る体制がなかった。縦割り行政の弊害の典型だ。

 警視庁はパロマの製造者責任も捜査している。だれが法的責任を負うのか、はっきりさせなければならない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060719ig90.htm