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2006年07月20日(木) 00時00分

米産牛進む対日輸出準備 東京新聞

 米国各地の牛肉処理施設で日本政府の査察が進んでいる。牛海綿状脳症(BSE)の危険部位混入で再禁輸している米国産牛肉が適切に処理されているかどうかを確認するのが目的だ。査察は二十一日で終了、問題がなければ今月中にも輸入を再開する見通しだが、安全性に問題はないのか。米国牛加工処理の現場をみた。 (米カンザス州アーカンザスシティーで、久留信一)

 米国有数の畜産州として知られるカンザス州。中西部特有の大平原に立地する米食肉加工会社クリークストーン・ファームズの処理工場では、日本向け牛肉輸出再開の準備が進んでいる。

 牛肉加工工程では、天井近くを走るレールに約二メートル間隔でつり下げられた牛肉を従業員が鋭利なナイフで解体していた。一時間に百五十頭前後のペースで動くレールは時折、三分間程度停止。

 「休止時間は安全対策の一つ。日本向け出荷の対応は万全だ」。同社のバレット・ハーグレーブス輸出部長は安全管理の方法を説明する。

 同社は、脊柱(せきちゅう)などBSEの感染原因とされる危険部位除去などの教育訓練を今年一月の再禁輸直後から強化。日本向け製品加工の注意事項を徹底している。

 日本の検査官が同社を査察したのは十一、十二の二日間。厚生労働省と農林水産省から各二人、米農務省の検査官も同行して処理の手法や出荷記録をチェック。大腸菌やサルモネラ菌などの防菌対策のほか、危険部位の除去方法なども調べた。同社最高経営責任者(CEO)のジョン・スチュワート氏は「検査官の特別な講評はなかったが、手応えは十分。結果は楽観している」と施設運営に自信をみせる。

 クリークストーン社はブラック・アンガスなど高級牛肉を扱う食肉加工会社として一九九五年に創業。製品の約三割を輸出に依存している。米ワシントン州でBSE感染が確認され、最初の禁輸が始まった二〇〇三年十二月以前には加工製品の二割強を日本向けに輸出していた。

 同社は、日本と同様の全頭検査実施を決断。検査官の雇用や検査施設建設など総額百万ドル(約一億千七百万円)を投じて検査態勢を整えた。

 だが、貿易再開交渉で「全頭検査には科学的根拠がない」と主張した米政府は同社の全頭検査の申請を強硬に拒んだ。現在は全頭検査実施を求め米農務省を相手とする行政訴訟を展開中だ。

 「日本の消費者の不安を取り除く最良の解決策は自主検査を認めてもらうことだ」。スチュワート氏は米国牛の信頼回復に懸命だが、日本の消費者志向に合わせたビジネス展開を模索する同社は米国ではむしろ、例外的存在。牛肉加工の八割以上を握るとされる上位四社は自主的な全頭検査に反対している。

 牛肉業界の強い政治力を背景に、米上院は八月末までに貿易が再開されない場合、日本製品への関税を強化する報復関税を可決し、対日圧力を強めている。

 査察終了後の貿易再開は秒読み段階に入っているが、衣の下によろいがのぞく米国の対応は、日本の消費者の不信を加速させる可能性をはらんでいる。

■CEOスチュワート氏

 クリークストーン社のスチュワート最高経営責任者が東京新聞とのインタビューに応じた。

 ——農務省が自主検査に否定的なのはなぜか。

 「行政は時に規制対象と緊密になりすぎて業界と同じような物の考え方をするようになる。市場の八割以上を支配する大手四社は検査をしたくないと言い、農務省はそれに耳を傾けた。検査は非常に高くつくからだ」

 ——どのくらいの費用がかかるのか。

 「加工会社のもうけは平均して牛一頭につき百七十ドル(約二万円)といわれている。生産コストは約百五十ドル。自主検査には一頭あたり二十ドルかかるから、もうけがすべてなくなる計算だ」

 「クリークストーンは顧客が望むことをする。顧客がその費用を喜んで負担してくれることも知っている。当社は輸出比率が高いが、(検査に反対している)大手の輸出比率は低く、目は国内市場に向いている。米国内の顧客はまだ、全頭検査を受け入れる状態にはなっていないようだ」

 ——訴訟が終了するまで日本の消費者にどのような形で安全を保証するつもりか。

 「全頭検査以外のあらゆる対応策を模索しているが、訴訟には勝てると踏んでいる。自主的な全頭検査実現に向けて強く主張を続けるつもりだ。判決の後、一週間以内にはテストを始めることができる。十一月上旬には検査済みの牛肉を日本に届けられるだろう」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060720/mng_____kakushin000.shtml