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2006年07月16日(日) 10時25分

パロマ事故 欠けた安全意識 メーカーも行政も放置毎日新聞

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事故のあった湯沸かし器と配線の仕組み    20年間に15人が一酸化炭素(CO)中毒で死亡したことが明らかになったパロマ工業製の瞬間湯沸かし器。なぜ、メーカーも経済産業省も相次ぐ事故に対応できなかったのか。そして、事故原因とされる安全装置の改造はなぜ行われたのか。パロマの当事者意識に欠けた対応、事故情報が共有できない行政組織、経済性や利便性を求める現場……。取材を進めると、安全がおろそかにされている実態が浮かんでくる。【中井正裕、桜井平、中村牧生、鳴海祟】

 ◇情報共有なく、対策怠り

 ガス事業法は、ガス関連の事故が起きた場合、ガス事業者に対して、発生から24時間以内の経産省への「通報」を義務づけている。今回の事故は全国で起きており、パロマ製の機器で発生していたにもかかわらず通報事業者はバラバラで、都市ガスとLPガスでも会社が異なっていた。
 経産省のまとめでは、パロマ製湯沸かし器による一酸化炭素(CO)中毒事故は85年以降、計17件。92年に3件、97年には4件起きていたが、同省は事故の共通性を見抜くことが出来なかった。
 17件の事故は都市ガスで7件、LPガスで10件だが、それぞれの担当課が異なっていたことも、情報を共有できなかった理由だ。さらに、製品自体の安全を担当するのは製品安全課で、「改造」を把握したのは今回の発表直前だった。
 また、92年1月の神奈川県内のケースでは、改造について報告を求めながら、パロマから「当社ではしていない」との回答があると、それ以上の真相解明を怠っていた。
 経産省が事故の共通性に気づくのは、警視庁が先月、照会してきた96年3月の事故をきっかけに過去の事故報告を調べ直してからだ。同省は「事故情報を管理して共通性などを精査する体制になかった」としている。
 一方、パロマが事故を初めて把握したのは91年。長野県で発生した死亡事故だった。翌92年に3件の死傷事故が相次ぎ、同社は経産省に報告するとともに、販売店などに依頼して同社製瞬間湯沸かし器の一斉点検を実施した。
 一斉点検後、事故は昨年11月まで計10件発生していたが、パロマが把握していたのは95〜01年の計3件だけだったといい、同社幹部は「経産省や販売会社から情報が来ていれば」とこぼす。
 しかし、同社による92年の一斉点検は「点検台数は販売分の半分に満たないと思う」(同社幹部)。また、92年以降、死者3人、重症者1人を出した3件の事故を把握しながら、安全装置の改造目的を調べたり、一般ユーザーに警告するなどしていなかった。
 同社幹部は今、「販売店への指導で再発は防げると思っていた」「製造終了から十数年が経過しており、01年以後、事故は発生しないと思っていた」と話す。しかし、こうした姿勢から、同社がすべての情報を把握したとしても、全台点検を実施していたか疑問だ。

 ◇安易な改造、事故招く

 今回、パロマが事故理由としているのは、安全装置の改造だ。安全装置が作動すると、ガスが点火してもすぐに消えてしまうため、異常時に遮断される電流が常時流れるようになっていた。こうした工作は、業界で「短絡」と呼ばれていた。
 名古屋市内のガス機器販売店の男性経営者(60)は「パロマ製品を含めて20年前までは“短絡”をやっていた」と認めた。バイクの直結と同様で、安全装置の配線を、同じネジの部分につないだり、針金で直結するなどするという。
 男性は「お湯がでなくなって困ったお客さんに『何とかならんか』と頼まれると、その場しのぎで配線をつなぎ替える応急処置をしていた」と明かした。
 また、同市内の別のガス機器販売会社の男性経営者(72)も「安全装置は業者なら誰でも外せる。知識がある人は、危険を認識しているのでやらないが、安易な考えでやってしまう業者がいてもおかしくない」と話した。
 短絡方法は、インターネットで紹介されていると明かす業者もいる。東京都江戸川区のガス工事業者は7年前、アパートに住む男性から「湯沸かし器の調子が悪い」と電話を受けて駆けつけた。湯沸かし器はパロマ製で、安全装置が作動しないよう改造されていた。
 男性は「反応が過敏ですぐ水に変わってしまうのでやった。ネットで調べて、掲示板に機器名や購入した時期、安全装置の状態などを書き込むと、詳しい人が情報を提供してくれた」と説明した。
 技術評論家の桜井淳さんは「死亡事故が起きるという危険性を知っていれば、湯沸かし器を改造する人などいない。最初に死者が出た段階でパロマが情報を周知徹底していれば、事故は防げたはずだ」と指摘。「パロマには消費者を守るという意識が欠けていると言わざるを得ない」と話し、「改造が原因」と説明する同社の姿勢を批判した。
(毎日新聞) - 7月16日10時25分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060716-00000002-maip-soci