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2006年07月11日(火) 22時59分

<トヨタ車事故>「対応に落ち度ない」 認識の相違鮮明に毎日新聞

 欠陥が見つかったのにもかかわらず、リコールなどを行わなかったとされるトヨタ自動車社員による業務上過失傷害事件。11日、熊本県警は「危険性を認識したのに放置した」として同社の歴代の品質管理担当幹部3人を書類送検したが、トヨタ側は「リコールの必要はなかったと判断した。対応に落ち度はなかった」と認識の違いを強調した。しかし、高品質と徹底したアフターサービスで「世界のトヨタ」にまで成長した同社の不祥事に、同社の車を扱う販売店には困惑が広がり、ユーザーからは誠実な対応を望む声が上がった。【浜名晋一、岡崎大輔、樋岡徹也】
 ■本社
 名古屋市の繁華街に近い東区泉1の同社名古屋ビルに入る広報部。午後3時過ぎから、報道各社の電話での問い合わせが相次いだ。当初は「落ち度はなかった」などとする簡単なコメントを読み上げるだけの対応だったが、午後5時ごろから記者数人が同部を訪れ、詳しい説明を求めるようになると、広報部員らが担当部署に問い合わせて事実関係を確認するなど、慌ただしさを増した。
 同社は午後5時半ごろ、これまで読み上げてきたコメントの下に、熊本県警の容疑に反論する内容の文書を加えた印刷物を報道陣に配布。しかし記者会見などの実施については、「いまのところ、予定はありません」などと繰り返した。
 ■販売店
 一方、トヨタ車の販売店やユーザーらからは、事情が十分に伝わらない状況に戸惑いと不信の声が上がった。
 名古屋市内のトヨタ車の販売会社の営業社員(29)によると、三菱自動車のリコール隠し事件以降、顧客からは「トヨタは大丈夫なのか」との声が多く寄せられたという。三菱からトヨタに車を替えた顧客もいたといい、「顧客と直接接するのは我々。どのように対応すればいいのか」と困惑した様子。三重県尾鷲市の販売店の男性(40)は「トヨタは故障時に無料で修理する『メーカー補償』の対象部品が多く、きちんと対応するのが社風だと思っていた。トヨタに限ってはピンと来ない」と首をひねった。
 ■ユーザーら
 今回の該当車種と同じハイラックスに乗るユーザーも戸惑いを隠せない。岐阜市の会社員、加藤祐次郎さん(25)は「トヨタは資金力もあるし、ちゃんと修理すべきだった」。三重県伊勢市の男性会社員(35)は「性能がいいと思ったが、これからはハイラックスを見るたびに心配になる」と話した。
 地域の看板企業による不祥事だけに、地元住民の受け止め方も複雑。名古屋市千種区、主婦、水木裕子さん(58)は「名古屋の人間として、トヨタの車を信頼していただけに驚いた。不具合があればしっかり対応すべきだ」と驚いた表情。愛知県稲沢市、会社員、西沢美麗さん(22)は「三菱のリコール隠しの時、友人と『車はやっぱりトヨタだよね』と話していたのに……」と残念そうだった。
 ◇判断が甘かった
 ▽自動車評論家・舘内端さんの話 故障してはいけない操舵(そうだ)系の部品である「リレーロッド」が壊れたのに加え、放置期間が8年というのは驚いた。トヨタは「重大な交通事故を起こしていない」とリコールの必要はないと判断したというが、この判断が甘かったと思う。エンジンがかからないとか、ねじが緩んだのと違い、ハンドル操作にかかわる部分は大事故につながりかねず、慎重に対応しないといけない。
 ◇行政側にも責任
 ▽モータージャーナリスト・三本和彦さんの話 年間約800万台も生産すると、大部分を下請けに出すなどして管理が行き届かなくなり、こうした事態になってしまうのではないか。メーカーの責任に加え、(リコールが放置されたとされる)8年の間には車検で気付く機会が少なくとも3回あった。行政の車検制度にも一定の責任がある。
 ◇立件は過去に4件…3件は三菱自製
 事故前にリコール担当者が製品の欠陥を知っていながら対策を取らなかったとして、メーカー側が業務上過失致死(傷)罪で立件された事件は、99〜04年に計4件あった。うち3件は三菱自動車(2件は03年に三菱ふそうトラック・バスに分社化)製だった。
 国土交通省などによると、02年1月、横浜市で三菱自動車(現在三菱ふそうトラック・バス)の大型トレーラーの左前輪が脱落。タイヤの直撃を受けて神奈川県内の女性(当時29歳)が死亡した。この事故では、業務上過失致死罪に加えて、元会長ら幹部3人と法人としての三菱自が道路運送車両法違反(虚偽報告)罪で起訴されている。
 元会長らは事故後にハブの強度不足が原因だと疑っていたのにもかかわらず、国交省に対して「整備不良が事故を引き起こした」と虚偽報告したためで、同省も「悪質性の高さがうかがえる特異な事例」とした。
 このほか、02年10月には三菱自が4駆駆動車「パジェロ」のブレーキ欠陥を知りながら追突事故を引き起こしたとして、同社幹部3人が業過致傷罪で略式起訴▽04年7月には三菱自(現在三菱ふそうトラック・バス)が大型トラックのクラッチ系部品の欠陥を知りながら山口県内で死亡事故を引き起こしたとして、元社長ら4人が業過致死罪で起訴された。
 三菱自以外は、富士重工業で、99年1月にアクセル欠陥のあった乗用車「レガシィ」が暴走事故を起こし同社元社員2人が書類送検されている。【種市房子】
 ◇会社存亡の危機も
 自動車のリコール放置による業務上過失傷害事件では過去、自動車メーカー3社の幹部らが摘発されている。三菱自動車のように、摘発がきっかけで社会的信用を失うなど会社存亡の危機に追い込まれたケースもある。
 富士重工業では、滋賀県守山市で96年、「レガシィ」が暴走してバイクと衝突し、運転手が重傷を負った事故が発生。滋賀県警が99年1月、速度制御装置の欠陥を知りながらリコールしなかったとして、元同社部長ら2人を業務上過失傷害容疑で書類送検した。大津区検は2人を同罪で略式起訴した。
 三菱自動車をめぐっては、熊本市内で00年に「パジェロ」がワゴン車に追突し、2人がけがをした。熊本県警が02年3月、ブレーキの欠陥隠しが原因だったとして、同社部長ら3人を同容疑で書類送検した。
 また、三菱ふそう(03年1月に三菱自動車から分社)では、横浜市で02年に発生した同社大型トレーラータイヤ脱落による母子3人死傷事故など3件について、神奈川県警などが業務上過失致死容疑などで立件。元幹部8人が同罪などで逮捕、起訴された。
 一連の事件で、三菱自動車は00年7月、社長が責任を取り辞任を表明。同社は経営不振に陥り、04年7月、産業再生法適用を産業経済省に申請した。【影山哲也】
(毎日新聞) - 7月11日22時59分更新

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