悪のニュース記事

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2006年06月30日(金) 02時02分

6月30日付・編集手帳読売新聞

 たばこの専売法が施行されたのは1904年(明治37年)の7月である。敷島の大和ごころを人問わば朝日ににおう山ざくら花…。本居宣長の歌から取り、「敷島」「大和」「朝日」などの官製たばこが登場した◆民営たばこに比べて実質値上げとなったことから、庶民は別の歌を口ずさんで憂さを晴らしたらしい。「値も高きおおやけ煙草(たばこ)くゆらせば煙の末に曽禰(そね)の顔見ゆ」。当時の蔵相、曽禰荒助(あらすけ)に向けた恨み節という◆専売制度が廃止された現在も価格は財務相の認可事項だが、人さまの顔色をうかがいつつ煙の行方に神経を用いる愛煙家に、大臣の顔を思い浮かべる暇はあるまい。増税に伴い、あすからたばこが値上げになる◆健康には悪い。肩身は狭い。そのうえ懐にも響くのなら——ということだろう。製薬会社ファイザーの調査によれば尋ねた喫煙家の3人に1人が、この値上げを潮に禁煙したい、と答えている◆「哲学が束になってかかろうとも、たばこにまさるものはあるまい」とはモリエールの戯曲「ドン・ジュアン」の一節だが、医学の戒めと、懐具合を計る経済学とが束になり、紫煙の誘惑とせめぎ合う月の替わり目である◆煙の末に、健康を気遣う妻の顔見ゆ、子の顔見ゆ、という方もおられよう。いま指にあるそのたばこを吸い納めの一服にしてみますか。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060629ig15.htm