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2006年06月22日(木) 00時00分

『87年以降投与』国に責任 薬害C型肝炎 薬害肝炎訴訟判決を受け「勝訴」の垂れ幕に拍手する支援者ら=21日午後、大阪地裁前で 東京新聞

 汚染された血液製剤「フィブリノゲン」などを止血用に投与され、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染したとして、男女十三人が国と製薬企業二社に計約七億六千万円の損害賠償を求めた薬害肝炎訴訟の判決で、大阪地裁は二十一日、「規制措置を取らず違法」と国の責任を認め、五人に対し計約一億三千六百万円を企業と連帯して支払うよう命じた。

 中本敏嗣裁判長は、ほか四人については三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)と子会社の二社だけに賠償を命令。残る四人の請求は棄却した。九人への賠償総額は約二億五千六百万円で一人当たり約千三百万−三千六百万円。国の賠償責任は一九八七年四月以降の投与について認めており時期により判断が分かれた。

 東京、福岡など五地裁で提起された集団訴訟で初の判決。八〇年以降だけでも一万人以上が発症したとされる大規模な薬害で国の安全確保義務違反を明確に認定しており、今後の薬事行政に大きな影響を与えそうだ。

 厚生労働省によると、薬害訴訟で地裁が国家賠償を命じた判決には、スモン訴訟やクロロキン訴訟の事例がある。

 判決は、八七年四月時点で非加熱のフィブリノゲン製剤の有効性が確認できない状況だったと認定。青森県で肝炎の集団感染が報告されたこともあり、危険性が高い状況なのに使用制限など規制措置を国が取らなかったのは「著しく不合理で違法」と指弾した。

 加熱製剤についても「安全性を十分に確認しないまま、申請からわずか十日で製造を承認しており違法だ」と指摘した。

 同月以前については、情報収集を怠るなどした国の対応を「医薬品の安全性確保について意識が欠如していた」と批判したが、当時の状況に照らし「危険性の具体的認識があったとは言えない」と違法性は否定した。

 旧ミドリ十字は八五年八月、ウイルスの活動を止める処理方法を変更したことで「感染の危険性を一層高めた」と過失を認定。以降に投与された九人に対する賠償責任があると判断した。

 九人の中には別の感染ルートとされる輸血を受けた原告もいたが、判決は製剤投与と感染の因果関係を認め「何らの落ち度がないのにHCVに感染し、深刻な被害を受けるに至った」と述べた。

 原告は、愛媛県今治市の会社員武田せい子さん(55)ら近畿、中四国地方の二十−五十代。出産や手術の際に止血剤としてフィブリノゲンや「クリスマシン」を投与されてHCVに感染、うち十人が慢性肝炎になった。

 クリスマシン投与の原告一人に対し、判決は「有効性は製造承認時もその後も否定されていない」として請求を退けた。

■薬害肝炎判決骨子

一、製薬企業は一九八五年八月以降にフィブリノゲンを投与された原告九人に賠償責任

一、このうち八七年四月以降に投与された五人は国にも賠償責任

一、血液製剤の有効性が確認できない状況だったのに、国が規制権限を行使しなかったのは違法

一、加熱製剤の製造承認過程も安全性確保の配慮に著しく欠け違法

一、九人のウイルス感染と投与に因果関係

一、賠償総額は約二億五千六百万円

一、ほかの四人の請求は棄却


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060622/mng_____sya_____007.shtml