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2006年06月14日(水) 11時55分

シ社、入札「より安く」で浸透 自治体は困惑朝日新聞

 東京都港区で高校生が挟まれて死亡したエレベーターの製造元・シンドラー社は、官公庁の入札で同業他社に比べて安値を提示して実績を伸ばしてきた。国内シェアは1%程度とされるが、官公庁に限ればその割合を大きく上回る。「税金を使う以上、より安い方を選ぶのは当然」としてきた自治体は、今回の事故に戸惑いを隠せない。

 東京都はシンドラー社製品の大口ユーザー。石原慎太郎知事は9日の記者会見で怒りをぶちまけた。

 「安かろう悪かろうじゃ困る」

 都営住宅にあるエレベーターは2942基。うち、シンドラー社製は344基と約11.7%を占める。全体のシェアからすれば突出した数字だ。都担当者は「(同社が)都営地下鉄大江戸線のエスカレーター設置工事を97年に受注した後から、積極的に参入してくるようになった」と話す。

 シンドラー社参入は、それまで高止まり傾向にあったエレベーターの入札に競争をもたらした。

 都によると、同社は04〜05年度に、都営住宅や都立学校のエレベーター設置工事6件を落札した。落札額は、いずれも予定価格の80%。これを下回ると受注できなくなる「最低制限価格」と一致する。

 愛知県では05年度、県営住宅や県立高校のエレベーター工事17件のうちシンドラー社が4件を落札、業界トップの受注数となった。4件のうち3件は、発注側が業者から安値の理由を聴き取りする低入札価格調査の対象となった。

 調査に対しシンドラー社は「資材のストックや、据え付け工事をする業者の協力で安くできる」と説明。結局、問題なしとして契約が結ばれた。

 また、大阪府が04〜05年度に発注した府営住宅や府立専門学校など23件のエレベーター工事の入札で、シンドラー社は4件を落札した。

 「発注する役所にすれば、1円でも安くやってくれるところに工事を任せるのは当然だ」。自治体担当者たちはそう主張する。

 しかし、安全への信頼を根底から覆す死亡事故と、説明責任を果たさなかった対応で同社への批判は収まりそうもない。エレベーターを止めての再点検を余儀なくされるなど、自治体への影響は広がりを見せる。

 東京都の要綱では、刑事事件として起訴されれば指名停止などの措置を取れるが、現段階ではできない。ほかの自治体も同様だ。

 「日本企業なら入札自粛もあり得るだろうが、シンドラー社の場合、どうなのか。かといって、こちらから『辞退してください』とも言えない」と、東京都の担当者は困惑気味だ。

http://www.asahi.com/national/update/0614/TKY200606140143.html