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2006年06月09日(金) 02時08分

6月9日付・読売社説(1)読売新聞

 [エレベーター]「どうして“凶器”になったのか」

 エレベーターが“凶器”になり、人命を奪った。

 東京都港区の23階建て区民向け住宅で、高校生がエレベーターに挟まれて死亡した事故が不安を広げている。都内では、同型機の使用を中止した施設もある。

 警視庁は、業務上過失致死容疑で捜査に乗り出した。エレベーター自体に欠陥があったのか。日ごろの保守管理に問題があったのか。事故機は、異音などのトラブルが起きていただけに、再現実験もして、両面から調べる。

 事故機を製造した「シンドラーエレベータ」と保守管理会社、住宅を管理する区住宅公社が捜索を受けた。再発防止へ、原因を徹底解明せねばならない。

 事故は、高校生が自転車にまたがってエレベーターから降りる際に起きた。ドアが全開のまま急上昇したという。

 エレベーターは通常、ドアが開いていると動かないよう、安全装置の設置が法令で義務付けられている。

 ドアにはスイッチが付いていて、閉じたことを感知すると、停止解除の信号を機械室の制御盤へ送る。これでブレーキがはずれて動き出す。このうち、どこかで異常が起きたことになる。

 シ社製エレベーターは全国に約7000基あるという。事故後、各地で閉じこめなどの異常発生が判明した。シ社製品に特有の問題とは限らない。だが、念のため、エレベーターの安全を所管する国土交通省は、ビル管理者を促して、シ社製品の総点検を急ぐ必要がある。

 シ社の姿勢にも疑問がある。現場の住民に一切、口を閉ざしている。国交省が設置場所の情報提供を求めたのに、当初は拒んだ。利用者に対する説明責任をどう考えているのか。

 同様の挟み込み事故は、国内外で過去にも起きている。国内では他メーカー製で2件あり、1人が死亡している。いずれも原因は、安全装置の不備だった。うち1件は、安全装置を構成する電子回路の誤動作が原因とみられている。

 エレベーターに限らず、家電製品も自動車も、今や、ほとんどがコンピューター制御だ。それを支えるプログラムや集積回路(IC)は複雑化している。欠陥を皆無にするのは無理と言われ、製品の回収や交換も最近、増えている。

 こうした現状を踏まえ、業界団体の日本エレベータ協会も2年前、安全装置を二重化するなどの対策を会員各社に呼びかけている。シ社を含め各社は、これにきちんと対応していただろうか。

 子供からお年寄りまで、エレベーターは、誰もが日常的に使う乗り物だ。安全には万全を期さねばならない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060608ig90.htm