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2006年06月08日(木) 00時00分

エレベーター事故 危険が放置されていた 東京新聞

 東京都港区の高層マンションで男子高校生がエレベーターに挟まれて死亡した事故の原因究明が急がれる。同じようなエレベーターのトラブルが起きていたのに、なぜ危険が放置されていたのか。

 「私たちは殺人エレベーターに乗せられているのか。これは人災だ」−事故のあったマンションの住民の憤りはもっともだ。

 マンションの高層化に伴い、エレベーターは住民のライフラインだ。それが突如凶器に変わり、安全性への信頼が根底から覆されたのである。

 安全装置が作動せず、ドアが開いたままエレベーターが急上昇し高校生が挟まれた。警視庁が業務上過失致死容疑で捜査に乗り出したが、コンピューターの制御盤のソフトなどに問題はなかったのだろうか。早急に原因を突き止め、同様の事故を防がねばならない。

 エレベーター製造元のシンドラーエレベータはスイスに本部を置くシンドラー・ホールディングの日本法人だ。「捜査中だからコメントできない」として、住民説明会への出席も拒否している。設計や設備についてきちんと説明すべきで、製造者としての道義感も責任感も欠けている。

 このマンションでは過去数年に同じエレベーターで住民が閉じこめられるなどのトラブルが多発しているが、マンション所有者の港区にはエレベーター管理委託会社からの報告が不十分だったという。対応がなおざりになっていた。

 同じ製造元のエレベーターによるトラブル例は各地に広がっている。都営住宅などで人が閉じこめられたり、不正常な停止をした。名古屋市営住宅や愛知県営住宅でも人が閉じこめられたことがあったという。

 同社製のエレベーターは全国に一千基以上ある。国内製より価格が安いので、競争入札の官公庁に納入されるケースが多いという。安全性の点検は十分だったのか。自治体など関係者は不具合を調査し、安全対策を実施すべきだ。

 二年前に東京・六本木ヒルズの回転扉に男児が挟まれ死亡した事故の教訓は生かされなかった。このビルの回転扉では負傷事故などが続出したが、ビル側と扉製造元で事故報告が不十分なうえ安全対策を取っていなかったのだ。

 重大事故の裏には軽微な事故が二十九件、ひやりとする事例が三百件起きているという法則がある。痛ましい事故の前兆を逃さないことだ。政府や関係機関はエレベーターやエスカレーターなど身近な施設でのひやっとした情報を収集し、共有する仕組みを整備する必要がある。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060608/col_____sha_____003.shtml