悪のニュース記事

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2006年06月08日(木) 01時49分

6月8日付・編集手帳読売新聞

 ひとりでエレベーターに乗ると、思い出す歌がある。「大きなるものに飼わるる心地してエレベーターの四方を見やる」(松村由利子)◆鳥かごがすうっと宙に持ち上げられるとき、なかの小鳥は同じ気分であるのかも知れない。無粋を承知で「大きなるもの」を言葉にしてみれば、都市文明、機械文明ということにでもなろうか◆居住空間は上へ、上へと伸び、“文明の箱”と無縁では過ごせない。東京都港区の公共マンションで高校生がエレベーターに挟まれて死亡した事故は、誰にとっても背筋が冷たく感じられる身近な惨事であろう◆事故が起きたエレベーターは二重のドアが両方とも全開のまま急上昇している。原因の究明はこれからだが、製造元「シンドラーエレベータ」社の対応が解せない◆港区が3日つづけて開いた住民説明会には、「捜査に影響する」という理由で出席を拒否した。国土交通省が事故機と同機種の稼働状況について情報の提供を求めたところ、「個人情報」を盾に一度は拒み、2日後にようやく応じたという◆エレベーターの設置場所や台数が個人情報とどう関係するのか見当もつかないが、人命の安全や事故の再発防止がこの会社にとって最上位の関心事でないことだけは見当がつく。「大きなるもの」の寒々とした舞台裏をのぞいた心地がする。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060607ig15.htm