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2006年06月08日(木) 00時00分

マンション暮らしに不安 エレベーター事故 足の悪いお年寄りが住む高齢者住宅ではエレベーターが外出を支える=文京区大塚で 東京新聞

 都心に乱立する高層マンションや、バリアフリー設計の高齢者住宅での暮らしの大前提は、エレベーターで移動することにある。だが、東京都港区のマンションで男子高校生が挟まれて死亡した事故で、エレベーターの“安全神話”はもろくも崩れ去った。ほかにも危険信号を見落としてはいないのか。都心の公共住宅を歩いた。

 「上へ参ります」の女性の音声が聞こえ、スーッと上昇していく感覚が足元で続く。

 東京・お台場のゆりかもめ・お台場海浜公園駅近く。都市再生機構、都住宅供給公社、都が共同で開発した高層住宅群にある都営住宅(十四階建て)で「シンドラーエレベータ」(東京都江東区)製のエレベーターに乗った。エレベーターは定員九人。各地でトラブルが明らかになったシンドラー社だが、特に揺れを感じることもなく最上階に着くと、扉が開いてレインボーブリッジ、人工海浜の景観が眼下に広がった。

 管理業者によると、お台場でこの業者が担当する六棟のうち、四棟がシンドラー社製。これらのエレベーターでは過去約五年間に、子どもが暴れて閉じ込められたのが二件、昇降機とホールの床面に段差があるままドアが開いたケースが四件あった。いずれも大事に至っていない。

 エレベーターはほぼ月一回点検をしているが、事故翌日にはシンドラー社や同業他社の保守担当者が点検に来たという。

 約十年前から母親(81)と三階に住む貿易コンサルタント男性(56)に話を聞いた。男性は、室内の工事に来た業者に指摘され、シンドラー社製と知ったばかりで、「本当に驚いた。同じ製造元というのはいい気がしない。乗っている途中で閉じ込められても大変。母には階段を使うように言う」と話す。

 七階に住む主婦(37)は「コンピューターの不具合かもしれないが、人がいないのによく五階で止まる。今回の事故で検査がしっかりするようにしてほしい」と顔を曇らせた。

 次に訪ねたのは、文京区が運営する五階建ての高齢者向け住宅(同区大塚四)。ここにもシンドラー社製のエレベーターが一基ある。

 高齢、上層階になるほどエレベーターへの依存は増すが、五階に住む女性(82)は「足が悪いから頼り切り。何かあると大変よね」と、信頼が揺らいでいることにこぼす。三階に住む女性(81)も「半年くらい前、ガタンと横揺れがあって、びっくりしたことがある。直してもらって、今はないけど」と振り返った。

 同住宅の管理人の男性(54)によると、点検はやはり月一回。「(任せているので)どこまで見てもらっているか分からない」と話した。

 事故を受けて、各地でエレベーターの調査が始まっている。

 都の調査では、都営住宅や都住宅供給公社管理で三百七十基がシンドラー社で、これまでに百三十六件の不具合が起きていた。

 本紙の調べでは、東京二十三区が管理する集合住宅、小学校などの施設でも、判明しているだけで七十基以上が同社製。これまでに高齢者施設で扉が開かないというトラブルや、区営住宅に設置された同社製エレベーターで「下りボタンが点灯しない」などの不具合があった。

 特に、高層住宅を多く抱える都心部での衝撃は大きい。

 ウオーターフロントなど高層マンションが林立する中央区では、大規模震災を想定して今年三月、高さ六十メートル以上の「高層住宅」の実態や課題、対策をまとめたばかり。

 だが、その中でもエレベーターについて「長期にわたり使えない場合は、一定階以上での居住は困難。避難や疎開が必要になる」と解決策は打ち出せていない。

 品川区も「災害時には歩いてもらうしかない」としつつも、三十一階建ての区民住宅で、途中の十七、十八階で水や食料を備蓄するなど“高層難民”向けに工夫をこらしている。同区は「高層難民対策は不可欠。区が今後建てる場合には同様の配慮をするが、民間マンションにまで強制はできない」と話す。

 いずれにしろ、日常は支障なく動くことが前提で、エレベーターそのものによる危険は想定していない。都心の暮らしが揺らいでいる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20060608/mng_____thatu___000.shtml