悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年06月05日(月) 00時00分

NHK改革 置き去りの公共性論議 東京新聞

 「公共性の再定義」がNHK改革の出発点だ。それなしに受信料の支払いを強制されても視聴者は納得できないし、政府、政治からの独立を確保できない“公共放送”が信頼されるはずもない。

 NHK改革が国民の注目を集めた契機は、番組改変の疑惑と不正経理発覚だった。独立公正であるべき放送番組の編集に関し、政治家の鼻息をうかがっていた。一部職員は受信料を湯水のように浪費していた。どちらも「公共放送」の看板のもとで行われたことである。

 受信料支払い拒否・保留の激増は視聴者の異議申し立てだ。それだけに改革には「公共放送とは」「国民はNHKに何を期待するか」「受信料はどういう性格の負担か」という根本の議論が欠かせない。

 だが、竹中平蔵総務相の私的懇談会「通信・放送懇談会」も自民党の「通信・放送産業高度化小委員会」も視聴者の声を吸い上げる作業さえしなかった。にもかかわらず、打ち出された改革の方向は、受信料の義務化、娯楽・スポーツ番組制作の民営化、チャンネル数の削減など公共性と密接に絡んだ事柄である。

 テレビを買えばNHKをみなくても払う義務があるのなら受信料は税金と同じだ。経営委員任命を通じた内閣の支配とあわせ、文字通り公権力の後ろ盾を持つ放送となる。

 公共放送の受信料義務化は外国にも例はあるが、英国BBCのような政治の圧力をはね返せる仕組みも気概もないままの義務化は、実質的な国営化と言っても過言ではない。

 地上波テレビに加え衛星放送やケーブル放送が普及した現在は「自分で選んでみる」時代だ。

 提供される放送の内容に注文をつけることもできないのに「黙って払え」と言われても、視聴者は、ましてNHKをみない、いわば視聴者でさえない人は納得できない。

 それでもなおあえて「義務」というからには公共性を再定義して、広く理解を得られる説明が必要だ。

 NHK内部からは進まない体質改革にいらだちの声が聞こえてくる。技術畑出身で指導力のない橋本元一会長の下で、幹部職員が政治家に対する事前説明、根回しに動き回るのは海老沢勝二前会長時代と変わらないというのだ。

 小泉純一郎首相の強い意向で改革案に盛り込まれる国際放送の充実も、現状のままでは単なる国策宣伝の場になりかねない。

 総務相、自民党ともに経済的視点に偏りすぎている。議論を放送、とりわけNHKの公共性という視点から仕切り直すべきだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060605/col_____sha_____003.shtml