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2006年06月03日(土) 00時07分

<インサイダー疑惑>「モノ言う株主」にメス毎日新聞

 ニッポン放送株争奪戦をめぐるインサイダー取引疑惑で、「村上ファンド」を率いる村上世彰代表に捜査のメスが入る。株を買い占めた企業に「モノ言う株主」として株価を引き上げる経営改革を迫り、「金もうけのための買収」と公言するなど日本のM&A(企業の合併・買収)社会で異彩を放ってきた村上氏。捜査の行方次第では、村上氏の動向がカギを握っている阪急・阪神統合問題にも大きな影響を及ぼす。村上ファンドの実像に迫った。
 ◇強引な手法に反発も
 「本社に現れた村上氏は『一等地に本社はいらないから売れ』とか『日清食品と合併しろ』と一方的にまくしたてた」
 昨年7月、村上ファンドに株を取得された明星食品の永野博信社長は村上氏の強引な手法に辟易(へきえき)したように振り返る。「一種の暴力団で、米国のファンドでもはやらなくなったやり方だった」。阪神電鉄株をめぐる阪急ホールディングスとの交渉でも、この“村上流”は変わっていない。
 元通産官僚の村上氏率いる村上ファンドはオリックス(宮内義彦会長)の出資を受けて99年7月に設立。翌00年1月に行った不動産業などの昭栄の株買い占めが「日本初の敵対的TOB(株式の公開買い付け)」として注目され、M&Aの世界に本格デビューした。TOBは成功しなかったが、同社はその後の経営見直しで業績が向上。渡辺憲二社長が「TOBが経営改革のきっかけになった」と認めるなど株主と経営者の間に緊張感を与え効率的な経営を促した。
 昨年のライブドアとフジテレビジョンのニッポン放送株争奪戦や楽天のTBS株買い占め劇では、ニッポン放送株、TBS株を取得していた村上ファンドの動向が注目され、村上氏はキーパーソンとして暗躍した。さらに阪神株の大量取得は阪神とライバルの阪急HDの経営統合に発展。投資家から巨額資金を集めては、成長性や資産が豊かな割に株価が低い企業の株を取得し、経営改革を迫る「もの言う投資家」として脚光を浴びた。
 市場では「村上氏は経営者に規律を与え、地位が低かった株主を企業が重視する流れを作った」と評価する声もあるが、「1円でも株価を引き上げて売り抜ける」という村上氏の強引な手法は物議をかもし続けてきた。
    ◇
 強引な手法を支えているのが、05年12月末時点で3842億円に上る巨額の投資資金。約40億円だったとみられる99年の発足時から、村上ファンドの名が世に響くのにつれて資金量は倍々ゲームで拡大し、現在は4000億円を突破したとみられる。個人スポンサーはゼロで、国内の投資家は企業の厚生年金基金など私的年金137億円をはじめとする5件で計706億円。残りは海外からの投資だが、その多くは国内の機関投資家が海外ファンドを経由して村上ファンドに投資しているとの見方が強い。
 一方、村上ファンドの資金の運用先は全体の96%に当たる3704億円が国内の株式で、海外への投資は残る4%の138億円にとどまる。国内株は、阪神やTBSのほか松坂屋、サークルKサンクス、住友倉庫、特種製紙など多岐にわたる。
 村上ファンドは3月、日本の投資顧問業を廃業し本拠地をシンガポールに移した。年1回の営業報告書の提出や証券取引等監視委員会の立ち入り検査を回避するのが海外移転の目的とみられているが、村上氏は「うるさいマスコミから逃れるため」と漏らしていた。4月にはオリックスが出資金を引き揚げ提携関係を解消することで基本合意するなど、村上ファンドの周辺では不透明さを増していた。【川口雅浩】
 ◇阪神株TOBは応諾確実…投資家離れ、換金迫られる
 東京地検の村上氏への捜査が明らかになったことで、村上ファンドが阪急ホールディングスの阪神電鉄株公開買い付け(TOB)に応じるのが確実な情勢になってきた。村上ファンドに出資している投資家が捜査を嫌って資金を引き揚げる可能性が強いためで、同ファンドは最終決断を迫られそうだ。
 村上ファンドが運用している約4000億円とみられる資金の出資者の間では、「村上氏側に阪急のTOBに応じるよう求める声が強まり始めている」(関係者)という。村上氏への捜査のあおりを極力避けたいためとみられ、「海外からの出資については不透明な面もあるが、少なくとも日本の出資者が引き揚げるのは確実」(市場関係者)との見方が強い。その場合、村上ファンドは阪神株を売却して換金せざるを得なくなる。
 村上ファンド側は阪急のTOBについて、1株当たり930円の買い付け価格を引き上げるよう求める意向を示していた。これに対し、阪急はTOB価格の引き上げ交渉には応じない方針を打ち出しており、「出資者が資金引き揚げの動きを強めれば、村上氏は930円のまま応諾せざるを得ない」(関係筋)との見方が広がっている。
 村上氏はこれまで阪神の株主総会で取締役の過半数を握る株主提案を出し、経営権を取って阪神の不動産など保有資産を分割することもちらつかせてきた。しかし、みずほ証券の高橋光佳シニアクレジットアナリストは「東京地検の捜査で、村上ファンドが阪神に取締役を送り込んで経営する余力はなくなった。経営権を取る選択肢が消えた以上、TOBに応じるしかない」とみる。
 ただ、早期にTOBに応じるのか、阪急が設定した期限の19日ギリギリまで条件面で粘るかどうかは、「捜査の進展次第」とみる向きが多い。捜査が長引いて村上ファンドの経営陣に混乱が生じるような事態になれば、TOB応諾の手続きに支障が出る可能性もある。【上田宏明】
(毎日新聞) - 6月3日0時7分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060602-00000146-mai-bus_all