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2006年06月03日(土) 01時39分

6月3日付・読売社説(2)読売新聞

 [新聞の特殊指定]「『当面見直さず』の結論は当然だ」

 新聞が毎日、家の戸口まで届く——。そうした戸別配達制度の大切さを理解し、今後も維持されることを願う大多数の国民の声に、公正取引委員会が折れた、ということだろう。

 昨年秋以降、廃止を含む見直しを検討していた新聞の「特殊指定」について、公取委が、結論を出すことを見合わせる、と正式に表明した。

 その決断をまずは歓迎したい。さらには再び不毛な見直し論が提起されることのないよう、強く公取委に求めたい。

 独占禁止法に基づく公取委の告示で、新聞社や販売店は地域や読者によって新聞に異なる定価をつけたり、値引きをしたりすることが禁じられている。

 これが特殊指定だ。新聞社が販売店に小売価格を指定できる「再販売価格維持制度」と一体となって、同一新聞なら全国どこでも同じ値段で購入できる戸別配達制度を可能にしている。

 もし特殊指定が廃止されれば、値引き合戦など過当競争が起き、撤退を強いられる販売店も出てこよう。地域によっては戸別配達がなくなり、購読紙の選択肢が狭められる恐れもある。

 1955年の指定から半世紀、何ら弊害は生じていないのに、なぜ公取委は突然、見直しを言い出したのか。

 竹島一彦委員長は、法律論にこだわった。「新聞の特殊指定に独禁法上の根拠があるのか。ゼロベースで見直すように言った」。独禁法に、公正な価格競争を否定するかのような特殊指定が含まれているのは法律的に矛盾している、という考え方だ。

 民主主義社会に不可欠な情報インフラとしての新聞の意義、日本の文化とも言える戸別配達制度が国民にもたらす幅広い利益といった視点が欠けていたのではないか。新聞業界からみれば、公取委は規制を改悪しようとしている、としか受け止められなかった。

 多方面から反対論がわき起こった。国会では「国民の知る権利や活字文化振興に影響が出る」などと、全政党が反対を表明、独禁法改正を目指す議員立法の動きも出た。地方議会でも戸別配達の存続を求める意見書採択などが相次いだ。

 全国紙各紙の世論調査でも、8〜9割が戸別配達の継続を望み、7〜8割が特殊指定維持を支持していた。

 競争原理の観点のみで特殊指定を廃止しようという公取委の姿勢に対する国民の反応は、耐震偽装やライブドア事件をめぐる競争至上主義、市場原理主義への疑問の声とも無関係ではないだろう。

 国会のコンセンサスと世論の重みを、公取委は忘れずにいてほしい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060602ig91.htm