悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年06月02日(金) 00時00分

駐車違反 民間の監視員ドタバタ初日 改正道交法の施行で、違法駐車の取り締まりをする民間駐車監視員=1日、東京都渋谷区桜丘町で 東京新聞

 改正道路交通法が施行され、駐車違反取り締まりの新制度がスタートした1日。東京・渋谷の繁華街でも、真新しい緑色の制服に身を包んだ民間の駐車監視員が初業務に就いた。だが、取り締まりに使う端末機の操作をミスしたり、もたついたりする間に、ドライバーが戻ってきて違反に問えなかった場面も。「こんな取り締まりをやられたら運送料が高くなる」と監視員に詰め寄る商店主も出るなど、ドタバタの運用初日をルポした。

 「あれ? 練習じゃこんなことはなかったんだけど」。作業開始の午前九時直前。JR渋谷駅西口で、端末機の立ち上げ操作をしていた監視員が突然、青ざめた。

 近くで見守る女性警察官が「だめですか?」と駆け寄る。復旧しようとしても動かない。結局、同駅付近の取り締まりに投入されるはずの五台が不作動となった。原因は、監視員のパスワードの入力ミス。作業手順確認のため、三十人の全監視員が渋谷署に呼び戻された。

 同九時四十分、気を取り直すように監視員二人が取り締まりに。同区桜丘町の区道の坂道で、すぐに違法駐車の赤紫色の軽乗用車を発見。デジタルカメラで撮影を始めると、通行人も取り囲み、携帯電話のカメラでその姿を写した。

 まずまずの出だしかと思ったが、「この色は茶色?」「いや紫色だ」。周囲の目を気にするように、二人で慎重に相談。車体の色や車種、違反場所などを端末機に打ち込もうとするが、作業は進まない。「いったい、いつ違反が確定するんだ?」。様子を見ていた通行人の男性が質問すると、監視員は怒ったような声で「違反標章(ステッカー)を張った時点ですよ」。

 違反車両の発見から標章を張ったのは二十五分後。新制度では作業は五−十分程度で終わらせる予定で、十五分もオーバーした。「でも、最初練習したときは四十分もかかったから、一歩前進だよ」。監視員はポツリと漏らした。

 ほかの監視員のペアは、十五分かけて取り締まるうちに、ドライバーが戻ってきた。近くにいた男性会社員(48)は「作業が順調に進まないと、不公平感が出る」と、その様子に困惑気味だ。渋谷署幹部は「早く全員が一定の水準になるように指導する」と話した。

   ■  ■

 渋谷駅に近く、飲食店などがひしめく「道玄坂通り」。道の両側で車やバイクが数珠つなぎという先月末までの日常風景は一変、「駐車台数は普段の半分以下」(商店関係者)と新制度の“効果”を指摘する。迷惑駐車で業務に支障も出ていた同通り沿いのガラス店の経営者(65)は「きょうはすっきりだね」と気持ちよさそう。

 ただ、街を歩くと歓迎の声ばかりではない。電気店の男性店長(59)は「お客が駐車場完備の大型店に流れてしまうかもなぁ…」。薬局の男性店長(31)も「渋谷の街にお金を落としているのは、車で遊びに来ている人たち」と顔を曇らせた。

■運送業者は悲鳴『弱い者いじめ』

 さらに切実なのは運送業者。「こんな制度誰がつくった。小泉さんか?」。道玄坂のすぐ近く。監視員が、集配に来た運送業者のトラックの取り締まりを始めると、茶道具店の社長(70)は怒鳴った。トラックの駐車場代分だけ運送コストが高くなるといい「民業圧迫だよ」とまくし立てた。トラックの運転手も「ほんの五分止めるだけ。やってけない」と悲鳴を上げた。

 別の運送業の男性(47)も「弱い者いじめ」とぶちまける。大手のように駐車場の確保などは無理。監視員がいないのを確認して一気に荷物を運ぶのが唯一の自衛策。「恐怖の連続だ。監視員は柔軟に対応してほしい」

 一方、にぎわっていたのは、通り近くの駐車場。乗用車用スペースがほぼ満車となり、前日まで利用率が三割だったバイク用も八割埋まった。運営会社は「特にバイク利用者の意識が変わるのでは。固定客の増加を期待したい」という。

 文・鷲野史彦、今村実/写真・千葉一成、松崎浩一

<メモ>新たな違法駐車対策

 都市部を中心に全都道府県の270署管内で取り締まりを民間委託する。短時間の違反も即“アウト”となるなど厳しくなった。運転者が出頭せず、誰が運転していたか確認できない場合、逃げ得を防ぐため、車検証上の「使用者」に違反金納付を命じる仕組みも導入。警察庁は「治安悪化で駐車対策に十分な人員を割けなくなったため」と新制度導入を説明。監視員が重点的に活動する地域や時間帯は、各都道府県警察のホームページで公表されている。


◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20060602/mng_____thatu___000.shtml