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2006年06月01日(木) 01時24分

6月1日付・読売社説(2)読売新聞

 [オウム松本公判]「裁判の打ち切りも仕方がない」

 弁護団の言い分に理はないということだろう。

 オウム真理教・松本智津夫被告側への控訴棄却決定について松本被告の弁護団が申し立てていた異議も、棄却された。

 東京高裁第10刑事部は3月末に控訴棄却決定を出した。これに不服があれば、同じ裁判所の別の裁判官に訴えることができる。今回、第11刑事部が異議を審理したが、結論は同じだった。

 第10部が控訴を棄却したのは、弁護団が指定期日までに、控訴趣意書を出さなかったからだ。刑事訴訟法は、控訴を申し立てた側が期間内に趣意書を提出しないときは、控訴を棄却しなければならないと定めている。

 異議申し立てで、弁護団は「趣意書を出すことになっていた日の前日に控訴棄却決定を出すのは、趣意書提出に対する妨害行為だ」などと訴えた。

 だが、弁護団が趣意書を出す予定だった日は、裁判所が最初に指定した期日より、約1年2か月も遅れていた。

 第11部は、「裁判所は趣意書提出まで決定を待つなどとは言っていない」とした。棄却決定後に弁護団が出した趣意書については、「内容も分量も薄く、期限内の提出が十分可能なものだった」と指摘した。

 そのうえで、弁護団が控訴趣意書を提出しなかったのは、「訴訟遅延を意図したものにほかならない」と断じた。

 他の証拠を総合して考えても合理的な認定だ。異議の棄却は当然の判断だ。

 約2年前、東京地裁で死刑を言い渡された松本被告は、自らは、控訴について意思表示をしていない。最高裁の判断は残っているが、弁護団のルール無視の姿勢が、裁判を打ち切りの方向へ向かわせてしまった形だ。

 「オウム事件のような大事件の裁判が、弁護団の手続きミスで打ち切られるのは問題だ」という見方もある。

 しかし、1996年4月に始まった松本公判は既に10年1か月を費やした。この間、松本被告は終始、不誠実な態度で裁判に臨んできた。「裁判の長期化で、結果を知らずに亡くなる人たちも出始めている」という被害者遺族らの話には、悲痛な思いがにじんでいる。

 オウム事件では、多くの謎が残されたままだ。今後も松本公判を続け、真相解明を図るべきだとの意見もある。だが、現実問題として可能だろうか。

 刑事裁判の目的について、刑訴法は、真相解明と並び、「刑罰法令の適正で迅速な適用・実現」を掲げている。迅速審理の重要性は、裁判員制度の実施を前にますます高まっている。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060531ig91.htm