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2006年06月01日(木) 03時13分

<改正道交法>駐車違反摘発強化 民間監視トラブル不安毎日新聞

 1日に改正道路交通法が施行され、民間の駐車違反取り締まりが始まる。デジタルカメラで証拠撮影すれば、即違反ステッカーを張れるようになり、運転者が反則金を払わなければ、車の所有者に請求する。監視員と運転手とのトラブルも予想され、多くの車を抱える業界には、戸惑いが広がっている。【遠山和彦、田村彰子】
 財団法人「東京都交通局協力会」は、警視庁城東署(江東区)の駐車違反取り締まり業務を請け負った。15人の監視員がJR亀戸駅前の繁華街周辺を担当する。同財団は都営地下鉄の売店運営などをしており、新規事業への進出だ。
 一番の不安は、違反者がクレームをつけてトラブルに発展すること。監視員は「みなし公務員」で、取り締まりを妨害すれば公務執行妨害にあたる。とはいえ、警察官が見守ってくれるわけではない。このため警察庁はマニュアルを作成した。「違反者が殴りかかってきた場合は間合いを取って無理に対処しない」「さらに危険を感じる時には、現場を速やかに離れる」
 「十分に研修を積んでいるので、大きなトラブルはない」と警察庁はみるが、同協会の片岸輝雄メンテナンス事業室長は「マニュアルだけでは対応できない。時間帯によっては酔っぱらいの応対もしなくてはいけない。想定しないことが起こる心配もある」と話す。
 公平な取り締まりに対する懸念も、一部で出ている。業務を請け負った民間業者は74法人。業種別では、路上警備なども行っている警備業が41法人と最も多く、▽ビル管理業14▽交通安全協会など公益法人4▽不動産業2——と続くが、取り締まられる側からの「転身組」も。運送大手の日本通運は、全国で荷物の上げ下ろしのための駐車場確保など対策に乗り出す一方で、青森支店は青森警察署と契約し取り締まり業務に乗り出す。同社広報部は「ビジネスチャンスとして受注したが、取り締まりはルールにのっとって(自社でも区別なく)公正に行います」と話している。
 ◇反則金請求 業界に戸惑い
 これまでは、違反をしても反則金を納付しない「逃げ得」が目立ち、05年は違反者の27%が反則金を払わなかった。新制度はこれに歯止めをかける狙いもある。一方、レンタカー業界には波紋が広がる。反則金の請求が会社に来るからだ。
 全国レンタカー協会(3300業者)は、車にレンタカーであることと連絡先を示すシールを張る対策を打ち出した。摘発後に通報してもらい、車の返却前に客に反則金を払ってもらうためだ。反則金を払わずに返却に来た場合は、違反したことを認めるサインを求め、責任の所在を明確にする。それでも払わなければ、次回から車を貸さない。ニッポンレンタカーサービスの佐藤裕二フランチャイズ事業部長(広報室長)は「駐車違反した方がきちんと手続きをしてくれるかは不透明」と不安を口にする。
 運送業界の危機感も強い。日本通運は、コイン式駐車場の確保や運転助手の導入などを検討。佐川急便は、駐車場を利用しやすいよう集配車の小型化などに取り組む。全日本トラック協会は、荷主にトラックの近くまで受け取りに来てもらうことを呼びかけるチラシを100万枚作製した。車をすぐ動かせる状態なら摘発されないからだ。
 ◇英国は摘発過熱…「嫌われる職業」
 英国では、94年に駐車違反の取り締まりが警察から地方自治体に移管されたのを受け、多くの自治体が民間業者に業務委託した。80年代のサッチャー政権が行政各部門で進めた「民間の効率優先」主義が背景にある。
 現在はロンドンの主要行政区を含む174自治体が民間委託を実施し、業者に雇われた制服姿の監視員が路上や公共の駐車場で目を光らせる。
 数字だけ見れば効果はてきめんだ。ロンドンの駐車違反切符は02年490万枚、03年530万枚、04年600万枚と増え続けている。行政側の罰金収入も1億ポンド(約210億円)を超えた。
 一方、弊害も生んでいる。最大手の業者は、違反切符をたくさん切った監視員に車や旅行、大型テレビなどの景品を出すことにしたが、罰金収入だけを目標にした過当競争と批判され、中止に追い込まれた。熱心なあまり、バスや消防関係の車にまで違反切符を切った例も報じられた。市民の不満は強く、異議申し立てされる違反切符が全体の20%に上る。「英国でいちばん嫌われ、悪口を言われる職業」と陰口をたたかれ、監視員への脅迫や暴行が毎日のように起きている。【ロンドン小松浩】
  ◇   ◇
 日本では、民間監視員は違反車両情報を警察署に通報するまでが業務。反則切符を切ったり、反則金を徴収したりはしない。監視員は法人に所属し、法人と警察署が委託契約を結んでいる。委託料は一定額で、摘発件数は関係ない。
 警察庁によると、駐車違反の取り締まり件数は95年には約240万件だったが、05年は約150万件。「犯罪捜査など治安回復のために警察官をシフトし、人員が十分でなかった」(同庁)。一方、駐車違反についての110番は、95年の約30万件が05年は約65万件に増加。こうした数字が民間委託の背景にある。
 今回、民間委託を導入した270署の管内は放置車両が多く、全国の約6割を占める。同庁の試算では、民間監視員1600人によって500人分の警察官の余剰労力が生じるとみられ、犯罪捜査や空き交番解消などに充てる予定だ。
(毎日新聞) - 6月1日3時13分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060601-00000006-mai-soci