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2006年05月31日(水) 17時25分

佐世保事件から2年 被害者、加害者の父親が手記朝日新聞

 04年6月に長崎県佐世保市立大久保小学校で起きた6年生女児による同級生殺害事件から1日で2年になる。殺害された御手洗(みたらい)怜美(さとみ)さん(当時12)の父親で毎日新聞記者の恭二さん(47)と、加害少女(13)の父親は31日、それぞれ手記を公表した。御手洗さんは国に対し、加害少女の更生状況に関する情報開示を改めて求めた。加害少女は最近、父親との面会で、事件を起こしたことを反省する様子を示したという。

 関係者によると、少女は児童自立支援施設で集団生活を送っており、9月に少女の行動を制限できる「強制的措置」(2年間)の期限を迎えるが、県佐世保児童相談所は延長しない方向で検討を進めている。入所は継続する。

 佐世保同級生殺害事件の被害者の父御手洗恭二さんと、加害少女の父親が31日に公表した手記全文は次のとおり。

     ◇

 〈被害者の父、御手洗恭二さんの手記〉

 娘を失って2年。大きなショック状態からは脱しつつありますが、時を経ても苦しさが増すとは思い及ばず、戸惑っています。

 最近も少し気持ちが波立つ事がありました。昨年暮れ、加害児童の更生に向けてのプログラムや実施状況など情報提供を厚生労働省に申し入れました。全く何の音沙汰(さた)もないので、先日出向いて担当者と面談しましたが、検討中とのことでした。

 ところが面談の3日後、一部で「加害児童の更生が進んでいる」「強制的措置を延長しない」との観測が報道されたのです。「記事が出たこと」が不快なのではありません。「記事の内容程度すら公式に知らせてもらえないこと」が情けなかった。相手の親からも定期的に手紙が届きますが、既に法や制度は加害児童を親から引き離しました。「今どう育て直しているか」を聞く相手は、親に代わって加害児童を保護し、更生を目指している厚労省、施設、児童相談所しかないのです。

 私は、罪を犯した子どもが更生するには、その子が事件と真剣に向き合い、被害者や遺族に思いを寄せることが欠かせないと考えます。そして、その姿勢が被害者遺族に正確に伝わることで、被害者側は更生状況を判断でき、わずかですが心は落ち着きます。

 これまで国や関係機関は、視線を加害児童とその周辺に向ければよかったのでしょう。これからは被害者側にも目を向け、思いを理解してください。同時に「子どもを被害者にも、加害者にもしない」ために有用な情報は社会に還元し、少しでも社会の疑問や不安に応えてほしいと切に願います。

 それは加害児童の更生を阻害しない形で実現できると信じています。

 平成18年6月1日

 御手洗恭二

     ◇

 〈加害少女の父親の手記〉

 私どもの娘が取り返しのつかない事件を起こしてしまってから、2年がたちました。

 娘が大切な将来を奪ってしまった被害者様とご家族様に対しましては、どのようなお詫(わ)びをしても償いをしようとしても、しきれるものではありませんが、ただただ「申し訳ございません、一生償いを続けさせてください」と申し上げるばかりです。

 私どもは、以前は、子供が被害者になる事件のことを見聞きする度に、自分の子供が被害にあわないようにするためにはどうしたらいいだろうと考えたりしておりましたが、まさか自分の子供が重大な事件を起こして加害者になるとは想像したこともなく、連絡を受けても最初は信じられませんでした。

 私どもは、家庭内で娘と普通に親子の会話をしているつもりでした。娘は、学校での出来事や、好きな本のことなどをいろいろと話してくれていました。身体に障害のある私のために、着替えなども手伝ってくれました。

 娘が事件を起こす2、3日前、私は「チソン、愛してるよ」という本の広告を見つけました。交通事故で顔と身体にひどい火傷(やけど)と障害を負った韓国の女子大生が、最初は絶望していたけれども、やがてありのままの自分を見つめ、全身の障害と戦いながら前向きに生きるようになるまでを書いた手記だということでした。私が娘に内容を説明して「こんな本があるよ。すごいね。読んでみる?」と尋ねると、娘は興味を持った様子で、「読んでみたい」と言いましたので、私はすぐにこの本を注文しました。

 事件の前夜、私が娘に「今日、本を発送したそうだよ。2、3日で届くよ。楽しみだね」と言いましたら、娘はにこにこして嬉(うれ)しそうに「うん」とうなずいていました。しかし、その翌日に、娘は事件を起こしてしまいました。

 あのような本に興味を示して、私の話も素直に聞いていた娘の心の中に、恐ろしい考えが隠れていたとは、今でも信じられない気持ちです。(この本は、後日施設で娘に差し入れて読ませました。娘は感想文を添えた手紙を送ってくれました)

 私どもは、現在もずっと、どうして娘があんなことをするような子供になってしまったのだろうと考え続けております。いくら考えても答えは見つかりませんが、娘の考えや行動をきちんと見守ることができなかった私どもに大きな責任があることは間違いありません。

 この2年間、どのようにすれば償いができるかを考えてまいりました。どのような形でお詫びをしようと、娘が起こしてしまった取り返しのつかない行為の責任、そしてあのような娘を形作った私どもの責任の償いができるとは、とうてい思いませんが、私どもは、あの子を育てた親として、自分たちの至らなかった点を考えて反省し、娘が起こしてしまった事件から目をそらさず、決して逃げないようにするつもりです。

 娘は現在、専門の先生方のご指導の下で、人間としての正しい心を身につけるための勉強を続けております。最近では、面会のときに、自分がなぜあんなことをしたのだろうと考え込んだり、(被害者様の)お父さんは私のことをどう思っているだろうと言ったり、反省の言葉を自分から手紙に書いてくるようになり、私どもも娘の心の大きな変化を感じております。

 娘には、自分がしたことの重大さをよくかみしめさせ、親子で一緒に、一生懸命謝罪し続けていくつもりです。

 事件当時の同級生、在校生、保護者の皆様、担任の先生、校長先生をはじめ諸先生方、その他の地元の皆様には、言葉では言えないほどの大変な苦痛、ご迷惑をおかけしました。大変遅くなってしまいましたが、心から深くお詫び申し上げます。

 全国の皆様にも、不安と御心配をおかけしました。この機会をお借りして、皆々様に心からお詫び申し上げます。

 最後に、被害者様とご家族様に改めて深く深くお詫び申し上げるとともに、心から被害者様のご冥福をお祈りさせていただきます。

http://www.asahi.com/national/update/0531/TKY200605310377.html