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2006年05月30日(火) 23時46分

年金不正…現場に違法意識なし産経新聞

 国民年金保険料の不正な免除・猶予手続きを行った社会保険事務所が全国312事務所の3分の1にまで広がっていた。だが不正の実態解明は緒に就いたばかりに等しい。はっきりしてきたのは不正を行った事務所、事務局に法令違反の意識が著しく欠如していたことだ。現場は保険料の収納率アップのために、安易に法令順守の大原則を踏み外していた。

≪甘さ≫

 「できるところから、この方法を取り入れるように」

 30日更迭された静岡の鈴木薫元事務局長は昨年10月、管内9つの社会保険事務所の担当者にある方法を指示した。所得が基準より下回っている年金加入者に、免除・猶予申請の意思確認書を送り、返信がない未納者の手続きを無断で行う方法だった。

 保険料納付率向上の方法を話し合う対策会議で、出席者の1人から提案された“アイデア”。鈴木元局長は会議の場でその案を採用し、各事務所に指示していた。

 鈴木元局長は「このときは違法性の認識はなかった。納付率向上という目標に向かって一生懸命だった」と釈明する。

 しかし、京都の事務局で同様の不正が発覚した3月には「このやり方は難がある」と認識し、不正処理を取りやめるように指示。社保庁の調査には「適正」と虚偽の報告を繰り返していた。

≪ノルマ≫

 埼玉事務局管内では、納付率アップのためだけにコンピューター入力する不正が行われていた。

 浦和事務所では昨年11月、2.1%アップを目標とする12月分のノルマを達成するため、納付猶予対象者をコンピューター「登録」することを思いついた。登録といっても年金加入者に送る通知書が印刷されないだけで「承認」と同じ入力方法だった。

 12月から今年2月にかけ5690人分を入力。加入者がネット上で納付記録を確認できる仕組みが3月31日から始まることなどから、慌てて3月上旬に取り消した。入力、取り消しともに、加入者が知らない間に行われていた。

 浦和事務所の前田重雄所長は「12月分の納付率に反映させるためには、12月中に入力する必要がある。その準備として“登録”したつもりだった。加入者には不利益はなく、当時は悪いという意識はなかった」という。

≪なぜ?≫

 不正処理が発覚した26都府県のうち、静岡のように事務局が主導的役割を果たしていたケースは7府県、事務所が主導し事務局も了承していたケースが6府県。組織ぐるみの構造が浮き彫りになっている。

 なぜ全国に不正処理が拡大したのか。16年10月から社保事務所が市町村から住民の所得情報を得て、保険料免除・猶予対象者を特定できるようになったことが一つのきっかけとみられる。

 しかし社保庁の調査の過程でも「免除した方が年金権確保のため加入者のためになる」「配達証明を送ればOKだと思っていた」など、不正手続きに罪の意識を感じていない職員が多かった。

(05/30 23:46)

http://www.sankei.co.jp/news/060530/sha123.htm