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2006年05月28日(日) 13時03分

ニュースワイド2006:来月から駐車監視員制度 発見、即取り締まり /北海道毎日新聞

 ◇道警、抑止効果に期待
 札幌市内で6月1日から改正道交法が施行されるのに伴い、駐車違反取り締まりの民間委託が始まる。従来は路上駐車でも一定時間が経過しなければ反則切符を切られなかったが、6月からは民間企業所属の「駐車監視員」が巡回し、放置車両を見つけた時点で即取り締まりの対象になる。道警は「違法駐車の抑止につながる」と効果を期待するが、路上を仕事場とする運送会社は対策に頭を抱える。運用に問題はないのか。【金子淳】
 ◇「減点逃れ」防止に課題も
 ■■どう取り締まる!?
 取り締まりの対象となる場所は札幌市の場合、9警察署が指定した34カ所の重点地域と、32の重点路線。ススキノやJR札幌駅周辺、国道36号など交通量が多い場所だ。
 監視員は2人1組。放置車両を見つけると携帯端末で車両を撮影、ナンバーや違反場所などを入力し、簡易印刷機で印字した黄色のステッカーを車両にはる。監視員は警察署に戻ってコンピューターにデータを移し、これを基に違反者が出頭して反則切符を切られる。
 ■■どこまで厳格に!?
 改正法では、車両を離れただけで取り締まりの対象となるだけに、運送業界にとっては深刻だ。ススキノの居酒屋などに野菜を配送する運送業者は「路上駐車ができないと仕事にならない」とため息をつく。また酒店も「どこまで厳格にやるのかが分からないので、対策のとりようもない」と戸惑う。
 北海道トラック協会は昨年12月、道警に(1)貨物車両の駐車スペースの確保(2)時間帯による取り締まりの緩和(3)専用のパーキングメーターの増設——などを要望。道警は一部で事業用貨物車の駐車規制の解除などを検討中だが、「基本的には自助努力が前提」との姿勢だ。同協会は「今後どうなるのか。会員は不安を感じている」と話す。
 ■■客に賠償請求も!?
 違反者が出頭しない場合、車の持ち主が違反金を支払う「放置違反金制度」も導入される。道警は「これまで違反者の特定が難しかったが、今後は最終的な責任追及が可能になる」と話すが、この制度で割を食うのがレンタカー会社だ。客が違反すると、会社に違反金の支払い義務が生じる可能性がある。そこで「全国レンタカー協会」(東京)は客が違反した場合、警察が会社に連絡する仕組みを作った。
 会社が客に連絡し署への出頭と反則金の支払いを促す。あるレンタカー会社は「もし会社が違反金を支払うことになれば、客に賠償請求することも有り得る」と話す。
 違反者が出頭し切符を切られると「減点」されるが、所有者が違反金を支払う場合は「減点」はない。放置違反金は反則金と同額のため、違反者と所有者が同じ場合は「減点逃れ」を狙って、所有者として出頭することも考えられる。道警は「そういう可能性も有り得るが、『逃げ得』は許さない」と説明する。
 ◆頭抱える運送業者、中心街から撤退も
 ◇変化、具体像見えず−−中小業者
 午後3時。「麻生運送」(札幌市中央区)の運転手、大高成(あきら)さん(32)は、札幌駅近くのビルの前にトラックを止め、台車を降ろす。注文はコピー用紙60ケース。3階のオフィスまで、2度に分けて運び込む。「どんなに急いでも、30分近くかかりますね」。6月からは、車を離れている間に違反を取られる可能性も出てくる。
 同社が扱うのはコピー用紙や部品など。中央区内のオフィス街での仕事が多く、駐車違反取り締まりの問題には頭を抱える。麻生運送の田所博利専務は「ガソリン代が上がっている中、追い打ちをかけられたよう。対策を取ろうにもコストはかけられない」と悩む。
 一方、業界大手の「佐川急便」(京都市)は、全国の都市部で運転手に加え助手をつけ、積み下ろし後はすぐに移動できるようにする。また荷さばきのための拠点を確保し、そこから台車で運ぶなどの対策を進める。しかしこうした対策が取れない中小業者は中心街での仕事から撤退せざるをえない状況という。田所専務は「中小から大手に仕事が流れていくのではないか」と懸念する。
 配達を終え、大高さんは次の顧客の元へ向かう。配達先のビルの前は一般の放置車両が並ぶ。離れた場所に止めなくてはならないことも多い。「われわれも放置車両には困っている。一般車の取り締まりは大歓迎なのに」。6月以降、仕事がどう変わるのか。具体的な姿はまだ見えていない。
 ◆トラブルを懸念
 ◇「有望な事業」と落札−−警備会社
 札幌市中央区内の取り締まりを行う警備会社「セノン北海道支社」(中央区)の駐車監視員の実技訓練に同行した。駐車場の車を違反車両に見立て、携帯端末を使って作業手順を確認。作業にかかった時間は約5分だった。監視員の男性(40)は「普段から路上駐車は迷惑だと思っていた。もっとスムーズにできるよう訓練を重ねたい」。
 民間の監視員による取り締まりにトラブルを懸念する声もある。同区内の運送会社は「運転手の対応も警察相手とは違ってくるのでは。言い争いもあるかも」と明かす。
 市内の南、豊平、厚別、白石区を担当するビルメンテナンス会社「新生ビルテクノ札幌支店」(東区)は将来有望な事業と見込んで落札。福本信治・放置車両確認事務センター長は「トラブル対処マニュアルも作成した。6月以降も研修を通じてトラブル対応を考えていきたい」と話す。
 ◇短時間でも駐車場に−−市民の意識にも変化
 取り締まり強化に向け、市民の意識にも変化が生じているようだ。中央区の駐車場経営会社は「最近は短時間でも駐車する人が増えてきた」と話す。北区の駐車場も「昔は路上に止めていた人も駐車場に入れるようになってきた」という。
 一方、商店街は不安を抱える。北区の麻生商店街振興組合は「駐車できないとなると郊外の大型店舗に客が流れるかもしれない」と心配する。現在、商店街の駐車場スペースを増やすことも考えているが、「6月以降どうなるかはまだ分からない」と話している。
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 ■解説
 ◇背景に刑事事件の多発
 6月からの駐車監視員制度スタートで、重点地域では違反発見と処分の手続きが「分業化」されることになる。監視員の業務は違反ステッカーをはるまでで、その場で反則金の徴収はできない。徴収などはこれまで通り、警察が担当する。
 道警交通指導課によると、道内の駐車違反の取り締まり件数は、02年の約4万7000件をピークに05年は約3万4000件には減少。しかし一方で、駐車に関する苦情は02年の約3万3000件は、05年には約4万3000件と増えた。同課は「違反が減ったわけではない」と説明する。
 警察官は今後も発見から処分まで一連の取り締まりができるが、分業化には警察官を違反取り締まりの現場から切り離す狙いがある。刑事事件の多発で市民の体感治安が低下しているなか、人員を捜査へと振り分けるためだ。【金子淳】
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 ■ことば
 ◇駐車監視員
 公安委員会の試験に合格し、申請すると監視員の資格が交付される。道内では約600人が資格を取得し、うち38人が業務を受注した民間3社に所属し監視員となった。監視員の身分は「みなし公務員」で業務を妨げれば公務執行妨害となり、業務を巡り現金授受などがあれば贈収賄を問われる。
 ◇放置違反金制度
 駐車違反した違反者が反則金を支払わない場合、車両所有者に違反金の支払い義務が生じる。放置車両の運転者の特定が難しいことから導入された。車検を受けられなくなるほか、車両の使用が制限される。

5月28日朝刊
(毎日新聞) - 5月28日13時3分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060528-00000069-mailo-hok