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2006年05月28日(日) 17時38分

「悪い景観100景」選定 「風格なし」「看板洪水」朝日新聞

 都市計画、建築、土木などの専門家グループが、日本の「悪い景観100景」の選定を進めている。巨大看板、電線電柱、不況の街のシャッター商店街。小泉首相が「空の復活」を提唱した日本橋も含め70カ所をすでに選んで、写真にコメントをつけてホームページで公表している。「広く景観論議を巻き起こす刺激にしたい」と「100景」の完成を急いでいるが、やり玉にあがった側は当惑気味だ。

「桜島を眺める眺望のあり方」を問題にされ、悪い景観に選ばれたアミュプラザ鹿児島の観覧車=鹿児島市中央町で

東京・日本橋=「悪い景観100景」から(美しい景観を創る会提供)

「美しい景観を創る会」が各地のシンポジウムなどで使っているポスターのデザイン。九つの「悪い景観」が×印をつくっている

 「悪い景観100景」に取り組んでいるのは「美しい景観を創る会」(代表=伊藤滋・早大特命教授)。都市計画、建築、照明、土木、国土計画などの専門家12人が04年末につくった。政府の審議会委員や学会会長などを経験した第一人者たちで、各地でシンポジウムを開いて「美しい景観形成を国民運動に」と訴えている。

 「悪い景観」の選定は発足時からの構想だった。立ち上げ準備の話し合いの中で、「あれはなんとかならないか」と、いくつもの景観が話題になった。メンバーが日本各地で「これは」と思う場所の写真を撮って持ち寄り、暫定的に70カ所を選んで、寸評つきで昨年末からホームページで公表している。

 ビルに巨大な看板がある銀座の一角は「世界の銀座にふさわしい風格が見られない」のコメント。

 首都高速に覆われた日本橋は「日本を代表する名所に、あまりといえばあまりな仕打ちではないか」。新宿の夜景は「無差別な広告看板の洪水」。

 どこにもある景色も取り上げている。

 コンクリート護岸、絡み合う電線、商品を路上にはみ出して陳列している商店。歩道の宝くじ売り場は「公益企業が町並みに関して全く無神経だといういい見本」。自販機の林立には「夜の道を照らす照明の役割ではあるまいし」。シャッター商店街ではアーケードを問題にして「ただでさえ暗いシャッター街が蓋(ふた)をされていたのでは、輪をかけて陰鬱(いんうつ)な気分になってしまう」と評している。

 70カ所に順位はなく、順不同に並んでいる。「ランクづけしようか、ネット投票を受け付けようか、という話もあったのですが、とりあえず簡単な形で公表しました」と事務局の森野美徳さん。構想段階では「醜い景観」と呼んでいたが、「主観的な感じがするし強すぎる」と、「悪い」に換えた。

 「反論、反発も予想しましたが、意外にそういう反応は来ていません。『よくぞ言ってくれた』という評価がほとんど。訴訟も受けて立つ、という覚悟だったんですが」と話す。

 暫定70景を改定、追加して、今夏にも100景にし、今秋にはそれぞれに改善策も提示したいと言う。年内には、美しい景観づくりの政策提言を発表する予定だ。

   ■「地元では好評なのに……」

 「悪い景観」に選ばれてしまった側は複雑だ。

 「桜島を眺める眺望のあり方」を問題にされたJR鹿児島中央駅駅ビルの観覧車。大自然との違和感を指摘されたが、「地元では好評いただいているので意外です」と、鹿児島ターミナルビル宣伝販促課の小池洋輝課長は語る。

 観覧車は、04年9月に開業した駅ビルの目玉だ。「街のランドマークである桜島がビルに挟まれて見えなかった。展望台がわりに観覧車をビルにのせたんです」。行政や地元と協議を重ねて造った。

 桜島、街の目抜き通り、観覧車が一直線に連なるように場所を決め、花火大会の夜にはイルミネーションを消すなど、景観には特に配慮しているという。観光ポスターに写真が使われ、新しい名所にもなった。「住んでいる人と、中央の専門家の見方に差があるということなんでしょうか」と首をかしげる。

 神戸市の建築家、浅見雅之さん(37)は、発行しているブログ新聞に、「悪い景観100景を考え直す(1)(2)」というページを載せている。公表された70景それぞれに、褒め言葉の寸評をつける試みだ。日本橋は「歴史風土と現代技術の融合。これぞ東京という景観」、路上の移動式宝くじ売り場は「非日常な賑(にぎ)わいを演出します」、自販機の林立に「帰り道に明かりが見えるとホッとします」といった具合だ。

 浅見さんは「悪い景観100景」について「大先生たちの一刀両断が痛快な面もあるが、反論しにくい仕掛けだ」と言う。街づくりのプロジェクトにかかわってきた経験から、景観論議には主観の対立がつきものだと感じている。

 「100人規模の地域でも全員一致はありえない。異なる主観を持ち寄って対話して初めて共通の認識が生まれる、ということを示したかったんです」。70カ所の中には、どうしても褒め様が思いつかない所がいくつかあって、読者の知恵を募集している。

http://www.asahi.com/life/update/0528/004.html