悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年05月27日(土) 01時49分

5月27日付・編集手帳読売新聞

 ソ連では映画の制作にあたり、1日に撮影すべきフィルムの長さ「ノルマ・メートル」が決められていたという。セット撮影は55メートル、ロケは夏35メートル、冬25メートル、未達の場合は給料を引く◆黒沢明監督のソ連映画「デルス・ウザーラ」の制作に参加した黒沢組の記録係、野上照代さんが著書「天気待ち」(文芸春秋)に書いていた。ノルマを拒絶する交渉に苦労したらしい◆計画し、命令し、鞭(むち)を打つ。痛い鞭ほど成果が上がると信じて疑わない。ノルマ至上主義以上に、組織の硬直ぶりと上に立つ人の無能を証明するものはあるまい◆保険料の違法な立て替え払いや、保険金の不払いがいくつとなく発覚し、損害保険大手の「損保ジャパン」が金融庁から業務停止の処分を受けた。不正の背景に過大なノルマ営業があったことを会社も認めている◆販売目標を必ず達成するよう、社長が支店長クラスにまで電子メールで圧力をかけていたという。社長じきじきに“鞭”をもらい、「契約者保護」は営業部隊の頭から抜け落ちたようである◆野上さんの表題「天気待ち」とは、ロケで撮影を中断し、その場面に欲しい空模様を待つことをいう。営業の現場も照る日ばかりでない以上、ときにはじっと辛抱して待つのも監督たる経営者の仕事だろう。このドタバタ劇、「愚作」というほかはない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060526ig15.htm