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2006年05月26日(金) 00時00分

石綿被害国に賠償請求 8人、初の集団提訴 東京新聞

 紡績工場などが集中していた大阪府南部の泉南地域でアスベスト(石綿)にさらされ、石綿肺や肺がんなどを発症した元工場従業員や周辺住民ら八人が二十六日、「石綿の危険性を知っていたのに規制措置などを怠った」として、国に計約二億四千万円の賠償を求めて大阪地裁に提訴した。 

■『規制措置怠った』

 石綿被害をめぐる国家賠償請求で初の集団提訴。昨年六月に大手機械メーカー「クボタ」の旧神崎工場(兵庫県尼崎市)と周辺で健康被害が明らかになって以来、社会問題化した石綿をめぐり、国の対策に不備があったのかが法廷で問われる。

 原告側弁護団は「司法の場で国の責任を明確化し、新法の見直しも含めた全面的な被害救済を求めたい」と話している。

 原告は、同府阪南市の看護師岡田陽子さん(49)ら、同市や泉南市の工場に勤務していた元従業員と家族、周辺住民で、既に亡くなった三人の遺族も含まれる。

 訴状によると、岡田さんらは一九四三年から九二年にかけ、泉南地域の石綿製品の加工工場などで勤務したり、周辺で生活したりする中で大量の石綿に暴露。いずれも石綿肺などと診断され、うち元従業員二人と周辺住民一人は肺がんなどで死亡した。

 原告側は「戦前から泉南地域などで行った研究や健康調査の報告で、国は石綿被害の発生や法規制の必要性を認識していた」と指摘。四七年制定の旧労働基準法などに基づく(1)工場での石綿粉じんの飛散を抑制する(2)粉じんの暴露を防止する(3)家族や周辺住民への危険性を告知する−などの規制・監督措置を怠り、原告らの生命や健康を侵害したと主張している。

 三月施行の救済新法は、労災申請の時効(死後五年)を過ぎた元従業員の遺族と、中皮腫か肺がんを発症した周辺住民や元従業員の家族らが対象。岡田さんらは疾患が石綿肺であることなどが理由で対象から外れた。

 死亡者を含む元従業員三人は労災認定されている。

 同種被害の相談が相次いで寄せられており、弁護団は追加提訴する方針。

<メモ>アスベスト(石綿)

 天然鉱物の一種でごく細い繊維状なのが特徴。耐火性、絶縁性などに優れ、日本では約100年前から、建材や断熱材として多く使われた。いったん繊維を吸入すると排出されにくく、中皮腫、じん肺の一種である石綿肺、肺がんなどの原因となる。1970年代後半から労災認定される人が増え、2004年度までに800人以上に上った。労災申請が死後5年の時効を過ぎた遺族や石綿を扱った工場の周辺住民救済のため、今年3月に健康被害救済新法が施行された。住民は中皮腫と肺がんに限定された。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060526/eve_____sya_____000.shtml