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2006年05月26日(金) 00時00分

取材源秘匿また認めず 『犯罪に加担』原則そのまま 東京新聞

 米国健康食品会社の日本法人への課税処分に関する記事をめぐり、月刊誌「テーミス」の佐々木重敏編集長ら幹部二人が嘱託尋問で取材源にかかわる証言を拒否したことの当否が争われた裁判で、東京地裁は二十五日までに、例外として証言拒否をほぼ認める決定をした。だが、藤下健裁判官は「取材源秘匿は法的保護に値しない」との判断を示した。

 同裁判官は、読売新聞記者の証言拒否をめぐる裁判の決定と同様、「国税庁職員が守秘義務に違反して情報を漏えいした可能性が疑われる場合、取材源の証言拒否は認められない」と判断した。

 その上で「公的機関の違法行為を報道する場合、不正の責任追及や再発防止のために証言を拒否できる」と例外を認め、決定の理由について「裁判所が証言を強制すれば、こうした情報がなくなることが予想され、国や公務員の違法、不正行為の隠ぺいを強制するに等しい」とした。

 決定は二十二日付。決定によると、テーミスは二〇〇二年十月号に「国税庁が『大失態』で米国企業に屈服した」との見出しの記事を掲載。国税庁関係者の話として「国税庁が税法を都合のいいように解釈し、執行官庁の裁量を逸脱している」などと報じた。

■証言拒否 8割は認める

 米国健康食品会社の日本法人への課税処分報道に端を発した取材源証言拒否をめぐり、これまで読売新聞、NHK、共同通信の三社の記者に対し高裁と地裁の計四件の司法判断が示されている。

 テーミス幹部に対する今回の決定は、証言を拒否した百件超の質問のうち、約八割の証言について拒否を認めている。しかし、証言拒否を認めたNHK、共同通信記者に対する三件の決定とは、判断の枠組みが大きく異なる。

 NHK記者などのケースでは、公務員の守秘義務に違反して得られた情報でも「取材の手段・方法が社会通念上許されるものである限り違法性はない」とする最高裁の判例を引用し、原則として証言拒否を認めている。

 これに対して、藤下健裁判官のテーミスに対する決定は「公務員の違法、不正な行為を指摘する記事であれば、守秘義務違反が疑われる場合にも証言拒否が認められる」と、例外的に拒否を認めた判断といえる。

 読売新聞記者に対する決定でほとんど証言拒否を認めなかった同裁判官が、「取材源の証言拒否を認めることは、間接的に情報漏えいという犯罪行為の隠ぺいに加担するに等しく、許されない」とした原則は、今回も堅持されており、報道の自由と国民の知る権利に制約を加えかねない判断と言わざるを得ない。      

  (飯田孝幸)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060526/mng_____sya_____009.shtml