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2006年05月26日(金) 00時00分

損保ジャパン処分 東京新聞

 金融庁は二十五日、広範囲な違反行為をした損保ジャパンに異例の「厳罰」を下した。昨年から保険の契約・支払いに絡む問題が相次いで発覚する中、反省の色が見られない同社の経営陣と業界の体質に一石を投じたといえる。一方、同日記者会見した損保ジャパンの社長は経営責任について最後まで不明確な態度に終始した。 (経済部・村上豊、鈴木宏征)

■社長がげき

 「監督当局がいくら監視を続けても、らちが明かない。会社がちゃんとした経営管理体制をとるのが一番大切だ」

 金融庁の幹部は、損保ジャパンの違反行為が多岐に及んだ点に加え、それを放置し続けた経営陣の内部管理体制の不備を糾弾した。

 昨年二月以降、明治安田生命保険が保険金不払いで二度の業務停止命令を受けたほか、募集パンフレットの誤表示など、生保・損保に絡む問題の発覚が後を絶たない。

 今回の損保ジャパンでは、問題と指摘されたのが七項目。不正行為が発覚しても十分な調査をしなかったほか、山口支店では保有していた顧客の印鑑を幹部が廃棄して証拠を隠滅。保険料の立て替えでは社長自らが「年間予算を必ず達成するように」とメール送信して営業の現場にプレッシャーをかけていた。

 保険業界はこれまでも内部管理体制の不備で問題を繰り返しており、金融庁幹部は「バブル崩壊後の合理化で人員削減を行う中、営業現場は減らさずにバックオフィス(事務管理部門)にしわ寄せがきたのが要因の一つ」と指摘する。

 金融庁は最近、監査法人や消費者金融、銀行(スワップ取引)と業界大手に重い処分を連発している。だが今回の保険契約・不払いの問題は一般消費者と最も結びつきが強い。国民生活センターへの保険に関する相談は二〇〇五年度が約一万一千件で、前年度(約七千五百件)より大幅に増加。問題に対する反響が大きかった。

 こうした事情を踏まえ、金融庁は消費者保護を目的とした保険業界への規制を強化している。不当な不払い防止策として、取締役会で保険金を支払わなかった件数や苦情を把握するよう義務づけるなど、近く監督指針を改正。今後も不正行為に厳罰で臨む方針だ。

■教訓生きず

 「これまでお寄せいただいた信頼を損ねる結果となり、心よりおわび申し上げる」

 処分決定を受けて開いた会見の冒頭、損保ジャパンの平野浩志社長は神妙な面持ちで陳謝。「全責任は私にある」とも語り、金融庁の厳罰で受けた衝撃の大きさをうかがわせた。

 ところが、自身の進退については「金融庁に提出する業務改善計画の策定に合わせて経営責任を明確にしたい」と繰り返し、言葉を濁し続けた。

 しつこく問われ、ようやく「進退を含めて検討する」と認めた。一方で「会長になって財界活動や社会貢献活動をできれば、と思っている」と、あくまでも会長職にこだわっているかのような発言も飛び出し、社長の真意は分からずじまいだった。

 不祥事後の対応のまずさで記憶に新しいのは、同じ保険業界の明治安田生命保険だ。保険金の不当不払いが発覚し、当時の社長が辞任を表明した後も、内輪もめが続いて後任社長が四カ月近く決まらず、一部役員の退任で済まそうとした。

 その姿勢に金融庁が業を煮やし、結局、二度の業務停止命令と十一人もの役員の一斉退任という事態に発展した。昨年十月から始まった新規業務の無期限停止処分は今も解けないままだ。

 「うちの教訓が全く生きていない」。明治安田の関係者が指摘する通り、平野社長の煮え切らない態度が、さらに“傷口”を広げようとしている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060526/mng_____kakushin000.shtml