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2006年05月25日(木) 19時20分

リポートいばらき/重機窃盗が急増朝日新聞

 つくばエクスプレス(TX)の開業に伴う土地開発が進む県南地域を中心に、建設重機を狙った窃盗事件が相次いでいる。県警によると、重機窃盗件数は年々増加し、今年は昨年同時期に比べ、倍近いペースになっている。業界団体の05年度のまとめでは、県内の重機窃盗件数は全国ワースト1位。団体や建設機械メーカーも対策に乗り出しているが、建設重機が狙われるのはなぜか。重機窃盗団の手口や、その背景を探った。

 県警捜査3課によると、重機窃盗は年々増加=表参照。今年1月から4月末までの発生件数は164件で、昨年同期の89件に比べ、約2倍に増えている。

 特に、つくばエクスプレスの開業で開発が進む県南、県西、工業地帯の鹿行地域に被害が集中。県南・県西で重機窃盗の半数以上の被害が出ているという。

 建設機械メーカーなどが加盟する日本建設機械工業会のまとめでは、05年度に全国で盗まれた重機は933台。ワースト1位だった県内では約2割にあたる206台が盗まれており、2番目の兵庫県の97台を大きく上回った。全国的には緩やかな減少傾向にあるが、茨城県は03年度(157台)、04年度(113台)といずれも全国で2番目に多かった。

 こうした被害の増加を受け、同工業会は全国の税関や警察と連携して勉強会を始めた。建設機械の種類や型などを説明、実際に重機をみてもらい製造番号の位置を把握してもらったり、被害状況の情報交換などもしたりと、重機流出防止の対策に躍起だ。

 メーカーやレンタル会社も対応に追われている。
 建設機械メーカー大手「コマツ」(本社・東京)は、01年以降に生産した重機に、最新の全地球測位システム(GPS)や通信用端末を導入。重機の位置情報のほかエンジン稼働の有無、オイルの温度などを管理することで異常を感知できるようにした。予定にない重機の移動や深夜のエンジン稼働などが発見されると、自動的にエンジンを停止させたりできるという。

 大手の重機レンタル業者は、工事現場に重機を置かず、その日の工事が終わるたびに会社へ持ち帰り、一括管理をすることで被害を防いでいる。

 水戸市内の重機レンタル会社の関係者は「年間数台程度は盗まれている。1千万円前後の高額重機が被害に遭う」と話す。特殊な鍵型やGPSなどで対応しているが、それでも被害はなくならないという。ある社員は「犯人グループは鍵を壊して盗むこともあり、どれだけ対策を取っても、いたちごっこのようだ」とこぼす。

 捜査3課の佐川寿雄課長は「2次犯罪に使われることもあり、所有者、使用者が盗まれない努力をすることが大切。重機を使わないときは鍵を抜く、保管場所にも鍵をかけるなど管理を徹底してほしい」と話す。

 県内では今月11日、関東地方で重機窃盗を繰り返したとして、グループのリーダー格の男が窃盗容疑で逮捕された。

 男が指揮していた窃盗グループのメンバーは、「窃盗班」(5人)と「解体班」(4人)の計9人。

 捜査3課と境署の調べによると、グループの手口はこうだ。
 まず、「窃盗班」が土木作業場や建築現場に出向き、建設重機や発電機などを調達。抜き忘れた鍵などを入手し、解錠して、持ち込んだトラックに積み込み、栃木県那須烏山市の「解体場」=写真上=へと運ぶ。

 解錠する際、一般的な重機は乗用車と違い、限られた数の鍵型しかないのを悪用していた。

 「解体班」は塗料で重機の色を変えたり、車体番号を消すなどの偽装工作を施したりして、一晩で重機を解体。コンテナ詰め=写真下=にして、横浜市の本牧ふ頭からベトナムへ送り出していた。

 同様の手口で重ねた犯行は1都5県にまたがり、計64件。盗んだのは重機やコンテナ、発電機など約160台で、被害総額は2億5800万円に上った。

 被害に遭った重機は約40台で、いずれも1台あたり時価800万〜1千万円ほどで、ベトナムでは半値以下の150万〜400万円で取引されていたという。

 リーダーの日本人の男はこうした利益の中から報酬として、ベトナム人のメンバーらに約5万〜20万円を渡していた。

 一方、盗まれた重機が別の犯罪に使われるケースもある。今月13日未明には、つくばみらい市のスーパー店舗前に設置された現金自動出入機(ATM)コーナーの出入り口が壊され、現金約3600万円入りのATM1台が盗まれる事件があった。

 守谷市の工事現場から盗まれたパワーショベルが現場に残されており、ATMごとトラックで持ち去ったとみられている。

 県内で重機の盗難が多いのはなぜか。日本建設機械工業会の担当者は「茨城は宅地造成地に伴い工事現場も多く、さらに重機を隠す場所もたくさんあるのではないか。加えて海が近いという立地条件もある」と分析する。

 可住地面積の広い県では、ここ10年間、右肩上がりに宅地面積が増えている。つくばエクスプレスの開業もあり、県南では土地開発も進められている。その分、重機置き場も数多く、工事中は夜間も重機が現場に置かれたままのことも多いという。佐川捜査3課長も「簡易な塀などを作って覆ってしまえば、中で解体作業をしていてもわからない」と話す。

 さらに、海外での日本製の建設重機の需要の高まりを指摘する見方もある。
 今春、ひたちなか市の常陸那珂港に隣接する新工場の建設計画を発表した「コマツ」の広報担当者は「海外では、資源価格の高騰から開発のための設備投資に需要が高まっている」と話す。同工業会によれば、窃盗被害の約8割はパワーショベルとミニショベルで、中東や中国、東南アジアへの正規輸出ルートでも、性能の良さなどから人気があるという。

http://mytown.asahi.com/ibaraki/news.php?k_id=08000000605250001