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2006年05月25日(木) 00時00分

決断 国を相手に訴訟も・・・朝日新聞

 「初めて申し上げます。最悪の場合、国を相手に損害賠償を求める訴訟をやらなくてはならないような状況に追い込まれるかもしれません」

 20日夜、中央区内の区民施設で開かれた「グランドステージ茅場町」の住民総会。最後に挨拶(あい・さつ)に立った管理組合理事長の金子悦郎さん(47)=仮名=がこう発言すると、会場は水を打ったように静まり返った。

 金子さんが続ける。「国が、責任があると言いながら実態的に責任のあるような形での対応をしてくれないのであれば、私としては懐の中に刀を持つという形にならざるをえません」

 出席していた全36戸の多くの住民は、驚いた。

 「これまで金子さんは『国を訴えても、時間の無駄。現実的に対応して実利を取ろう』と言い続けてきたのではないか」「そんな金子さんが、ここまで思い切った発言をするとは……。建て替え案を巡って相当厳しい状況になっているんだな」

 住民の間にさまざまな思いが駆けめぐった。理事長の「方針変更」を質(ただ)した住民は1人もいなかった。

 この日の総会では、区の担当者が来て「建て替え案の考え方」や「追加負担の助成内容」などの説明があった。

 耐震偽装の発覚から半年が経過したが、建て替え案はまだ固まっていない。住民の要望で一番多いのが「部屋の広さの現状維持」。都市再生機構(UR)が提案した「専有面積約100平方メートル、負担金2千万円強」案も含め、区と住民代表の協議が続いている。
 質問が集中したのは、区の担当者が「追加負担の助成内容」を説明したときだった。

 最近、国土交通省で決まった建て替えマンション購入の際の助成は、所得によって3段階に分かれている。(1)所得1200万円超が最大192万円の助成(2)600万円超1200万円以下が192万円〜354万円(3)600万円以下が354万円。過去の災害支援などに倣った内容で、600万円以下の所得者には「特例対象」が認められ、収入・資産の状況から特に支援が必要な場合に最大603万円が助成される。

 「所得とは、いつの時点?」「給与収入の場合の助成額は?」「全員、特例対象にならないのか?」。二重ローンの負担を少しでも軽くしたい切実な問題だけに、次々と質問が飛んだ。

 実は、金子さんが「国家賠償」を口にするきっかけは、この追加負担助成の決定だ。昨年12月、「追加負担助成、一律700万円」といった情報が流れたことがあった。仮に700万円が助成されれば、UR案の2千万円強の負担金が「1千万円台になる。なんとか住民の了解を得られそうだ」と思ってきただけに衝撃は大きかった。

 「グランドステージ茅場町」の住民の平均年収は1千万円を超えている。決定した助成を受けたとしても、負担金が2千万円を切るのは難しそうだ。

 「国はこれまでの災害支援と同じ枠組みの中で対応している。耐震偽装事件は『災害』なのでしょうか。特例措置をとるべきです。訴訟でないと、国が責任を認めないというのなら訴訟を起こすしか……。追い詰められて決断する日がくるかもしれません」

http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000210605250001