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2006年05月25日(木) 00時00分

【関連】 『いつか歴史が審判』 靖国合祀訴訟 東京新聞

 「いつか必ず歴史の正しい審判が下されるはずだ」。父親や夫を戦地に送られ、命を奪われた韓国人遺族らの訴えは届かなかった。東京地裁で二十五日、言い渡された靖国神社合祀(ごうし)訴訟の判決。請求を全面的に退けた判断に、亡き家族の無念を訴え続けた遺族らの間には、失望と怒りの声が広がった。 

 中西茂裁判長が判決を言い渡すと、法廷は怒号に包まれた。「(朗読は)主文だけか!」。約五十の傍聴席を埋めた原告らが口々に叫び、騒然とした雰囲気になった。

 この日、法廷は傍聴席数を大幅に超える原告らで埋まった。座れなかった原告らが傍聴席脇の通路にあふれ返り、裁判所職員が廊下に退出させようとすると、「原告に判決を聞かせないとはどういうことだ」などと詰め寄る場面もあった。

 判決後の会見。冒頭で代理人の大口昭彦弁護士は「裁判所は全部棄却してしまった。(判決は)理由にならず怒りに堪えない」と憤り、「ただちに上訴してとことん闘う」と語気を強めた。

 会見に臨んだ原告は四人。遺族の李熙子(イ・ヒジャ)さん(63)は「私たちの家族が死んでからも靖国に支配されていた事実は許し難い」と、目に涙を浮かべた。家族が合祀されたことを証明する靖国神社が発行した証明書を示し「失望や絶望はしない。ここまで関心を持ってもらったのは裁判を起こしたから。判決の間違いを指摘しながら次の裁判に進みたい」と決意を新たにした。

 李炳柱(イ・ビョンジュ)さん(81)は「行政の場で解決すべき問題だった。仕方なく司法の場で五年間闘った結果が今回の判決。棄却理由には加害者が被害者になすべきことがまったく欠けている。いつか必ず歴史の正しい審判が下されるはずだ」と話した。

 複数の韓国メディアも会見場に姿を見せ、判決に対する同国での関心の高さもうかがえた。

 ■靖国側は分祀拒否

 靖国神社への合祀の在り方をめぐっては、戦後六十一年目を迎えた今も国内外で議論が絶えない。自民党総裁選を控えてA級戦犯分祀論が再浮上する兆しもみせており、憲法が政教分離を定める中、A級戦犯も「英霊」とする宗教法人と国との関係が問われた二十五日の東京地裁判決は、こうした議論に影響を与えそうだ。

 厚生労働省によると、旧厚生省が靖国神社に戦死した軍人・軍属の名簿提出を始めたのは一九五六年から。靖国神社側の要請に協力する形で始まり、旧陸軍に関するものは各都道府県に残る資料を、旧海軍は旧厚生省資料を基に取りまとめた。

 その後、政教分離の原則に触れるとの批判が強まり、八七年に名簿の提出を中止。九〇年までは閲覧を認めていたが、九〇年以降は遺族や戦友に閲覧させ、遺族らが靖国神社に報告して合祀する形を取ってきた。

 A級戦犯などに関する「分祀論」について、靖国神社は「一度祭った個々の霊の分祀はあり得ない」との立場。九五年には朝鮮人約二万一千柱について、韓国でも霊を祭り慰霊することが可能になる儀式を靖国神社は行ったが、この時も「分祀、分霊とされるのは納得いかない」としている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060525/eve_____sya_____008.shtml