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2006年05月25日(木) 00時00分

問われる倫理の確立 政界との距離 変化も 東京新聞

 日本経団連の新会長に二十四日、就任した御手洗冨士夫キヤノン会長。「イノベート(変革)日本」をキャッチフレーズに掲げ、経済界をリードすることになった。「重厚長大」企業が会長を務めたこれまでの経団連の歴史を、ハイテク企業であるキヤノン出身の会長がどう塗り替えるのか。課題が山積する中、新「財界総理」の力量が問われる。

  (経済部・斉場保伸)

■不祥事

 「また、このタイミングで談合か」。日本経団連関係者の一人は、表情をゆがめた。

 というのも、昨年も定時総会時期に橋梁(きょうりょう)談合事件が発覚。記者会見での質問が、企業倫理の確立に集中したからだ。

 今度降ってわいたのは汚泥施設談合。容疑をかけられた大企業の名がずらりと並んだ。実は、奥田碩前会長が、「やり残したこと」の一つとして掲げたのはこの企業倫理の確立だった。

 奥田前会長時代は牛肉偽装や原発のトラブル隠しなど、企業倫理のかけらもない不祥事ばかりが際立った。そのたびに経団連は、会員企業にモラルの確立を訴えたものの効果はほとんどなし。

 御手洗会長も「不祥事撲滅は経営者の倫理観によるところが大きい。不祥事を起こさないよう繰り返し訴えるしかない」と述べるにとどまり、“特効薬”は見いだせない状況だ。

■政治献金
 
 「御手洗会長になっても、経団連との関係は不動。御手洗さんは最も信頼する経済人の一人だ」。この日、都内で会見した自民党の中川秀直政調会長はエールを送った。

 海外駐在が二十三年と長かったこともあり、パイプが細い政治との関係をどう構築するかも大きな課題だ。

 奥田前会長がほぼ十年ぶりに再開した政治献金。外国人持ち株比率が50%を超えるキヤノンの場合、本体自体は政治献金ができないことも、政治との距離を遠ざけている。

 経団連にとって、政治との「距離」は常に問われる問題だ。ただ、経済財政諮問会議の民間議員として政策決定にかかわった奥田前会長は「政治に近すぎて、物が言いにくかった」(経団連関係者)側面がある。

 御手洗会長は「自由にものを言える距離」を政治との間につくりながら「これから政策論争を通じて、意見を同じにする人をつくりたい」と話す。

 財界長老の一人も「政治と手を組む必要はない。どんどん経済界から政治をつついていけばいいんだ」と指摘しており、どこまで、政策実現に向けた理想の距離に近づけるかが問われる。

■海外経験

 政治的な関係が冷え込む中、経済的なつながりがますます活発になる中国。御手洗会長は小泉純一郎首相の靖国神社参拝を「経団連としては、首相の靖国参拝に意見するつもりは全くない」と力を込めた。

 その理由を「不戦の誓いは政治そのもの。経済界の意見をまとめることにどれだけの意味があるのか」と述べ、首相の靖国参拝の再考を促した経済同友会とは一線を画す。

 「胡錦濤国家主席、温家宝首相とも面識はない」という御手洗会長だが、中国経済界には知り合いが多い。長年の海外経験で培った豊富な国際感覚を生かし、中国をはじめとするアジア諸国との民間経済交流をどう拡大していくか、も注目される。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060525/mng_____kakushin000.shtml