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2006年05月24日(水) 00時00分

不安 追加負担見えぬ明日朝日新聞

 ヒューザーの小嶋進社長が詐欺容疑で逮捕された17日。「グランドステージ茅場町」の管理組合の役員宅には、コメントを求めるマスコミ各社の電話がかかってきた。

 役員の1人、李美姫さん(48)=以下、いずれも仮名=は受話器を握りしめ、大声を張り上げた。「つまらない質問はしないでよ。彼が逮捕されたって、私たちの生活は何も変わらない。どうでもいいことです!」

 「グランドステージ茅場町」に入居していた36戸の住民は2月から、中央区が用意した区民住宅や都市再生機構(UR)の4カ所の賃貸住宅に分散して暮らしている。転居先の割り振りを担当した李さんは3月上旬、区の担当者と1軒、1軒訪ね歩いた。困っていることや不満、苦情を聞き取るためだ。

 10分で終わることもあれば、2時間以上、話し込むこともあった。面と向かって不満や苦情を口にする住民は、ほとんどいない。だが、どの家庭でもこんな光景を目の当たりにした。

 いまだに段ボールが各部屋に積み上げられたままの家庭もあれば、入りきらずにドアの外の廊下に5、6個の段ボールが置かれているところもあった。本棚やタンスの置き場所がなく、室内の狭い廊下に置いたり、靴箱に収納できない靴をトイレに並べたりしていた家庭もあった。

 「グランドステージ茅場町」の平均専有面積は約100平方メートル。転居後の広さは3分の2以下が大半だ。李さん自身、狭い押し入れに物を詰め込むのに苦労した。「積み上げられた段ボールなどを見ていると、言葉で不満を言われるより、痛々しくて……」

 いま、住民の間での一番の不安は、建て替えに必要な追加負担額が、どのくらいになるかということだ。

 URが提案している建て替え案は、専有面積約100平方メートルで、1戸当たりの負担金は2千万円強。金利3%の35年ローンを組んだ場合、現在のローン返済に加え、月に約9万円が増える計算だ。

 会社員の田中直樹さん(33)は「グランドステージ茅場町」のローン返済のため、月に23万円を支払っている。「UR案は住民総会で決定されたわけではない。そのくらいの追加負担を覚悟しなければならないとすれば、今後、何をどう節約すればいいのか」と頭を抱える。

 妻で会社員の美由紀さん(36)も、「以前は、週末の外食が家族の楽しみの一つだった。転居後は行ったことがない。気分転換で外出しても、お金が気になって、すぐ『帰ろうか』という雰囲気になってしまう」。

 唯一の気晴らしは、分散して暮らす住民との交流だ。保育園に通う2人の息子は3歳と10カ月。ときどき同じ年頃の子がいる3、4人の母親と集まっては、お茶を飲みながら、近所の小児科医の評判や保育園の話題で時を忘れる。

 会社員の山中黎子さん(28)は、その仲間の1人。「どうせなら、楽しんで住まないと……」

 8カ月の長男の初節句。「初孫だ」と祖父母が高さ50センチの鎧兜(よろい・かぶと)をプレゼントしてくれた。置き場所に困り、リビングの1人用ソファの上に飾った。祖父母は気を遣い、節句の祝いに訪れることはなかった。

http://mytown.asahi.com/tokyo/news.php?k_id=13000210605240001