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2006年05月24日(水) 00時00分

利益還元は大口優遇? 大手銀グループ最高益 東京新聞

 三大メガバンクがそろって公的資金の早期完済見通しを示すなど、予想通りの好結果に終わった大手銀行六グループの二〇〇六年三月期決算。今後は、ようやく利用者への利益還元が期待されるものの、高い手数料の引き下げや預金金利の引き上げには消極的。金利自由化で銀行が大口預金者を優遇するとの観測も強く、銀行に対する「もうけ過ぎ批判」はしばらくやみそうにない。 (経済部・鈴木宏征)

■半人前

 「まだ国民の税金を入れていただいている最中。まさに『半人前』の表現が当たると思う」

 全国銀行協会の畔柳信雄会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は二十三日の会見で、素直に認めた。「半人前」とはこの日朝、与謝野馨金融相が、公的資金が残り、預金金利も低水準なままの大手銀行を皮肉った言葉だ。

 とはいえ、三大メガバンクがすべて、本年度内の公的資金完済を表明。二兆九千億円を超す公的資金を抱えるりそなホールディングスまでもが、あと三−四年ほどで返済原資の多くを確保できる見通しを明らかにした。二〇〇三年六月に就任した細谷英二会長は「(当時は)返済どころか、金融庁から『これ以上公的資金を注入されないよう、体を張ってほしい』と言われた。それを思うと、本当にありがたい」と感慨深げだった。

■うまみ

 過去に積み上げた貸倒引当金の戻り益という特殊要因もあったにせよ、なぜ大手銀行はこんなにもうかるのか。

 実は、融資部門で激しい金利引き下げ競争が続いているため、金利収入は各グループとも横ばいか微減。それを補って余りあるのが、投資信託や変額個人年金などの販売手数料収入の大きな伸びだ。

 商品などによって異なるが、販売額の数%が手数料として入り、融資と違って銀行がリスクを取る必要もなく、銀行にとっては「うまみ」だらけなのだ。

 一兆円を超す最終利益をたたき出した三菱UFJの場合、連結粗利益に占める手数料収入(役務取引等利益)の比率は〇六年三月期で30・5%(前期比3・4ポイントアップ)、実額は一兆九百九十七億円にも達した。他のグループも一様に手数料収入を伸ばしている。

 その陰で、変額個人年金を買った高齢者からは「銀行で売っているから信頼して買ったのに、元本割れ商品とは知らなかった」といった苦情が、全国各地の消費者センターに相次いだ。

 昨年十二月からは、銀行の支店ごとに保険販売についての法令順守の責任者を置くことが義務付けられたものの、金融商品の知識に乏しい顧客が不利益を被るリスクはなお残る。

■選別

 収益の柱となっている手数料の引き下げについて、銀行側には「戦略的に無料にすることはあっても、単純に下げるとかゼロにするのはあまりいいことではない。手数料は価値のあるサービスをしたことの裏返しだ」(前田晃伸みずほフィナンシャルグループ社長)など消極姿勢も目立つ。

 一方、住宅ローン金利が三月の量的緩和政策の解除前から徐々に上昇を続けているのに対し、預金金利はほとんど上がらないまま。上がったのは、今後予想される金利上昇局面では手を出しにくい長期の定期預金が主だ。

 預金金利が上昇に向かう契機とみられているのが、夏以降に予想される日銀のゼロ金利解除だ。

 第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「今後は大口と小口の預金者で金利やサービスに差が出ることが考えられる。銀行から見れば大口預金者の方が、かかるコストが割安だからだ」と、銀行が顧客の“選別”を始める可能性を指摘。「銀行の経営体力をサービスで手厚く還元するところも出てくるはず。預金者には銀行を見極めるしっかりとした“選択眼”が求められる時代になる」と警告する。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060524/mng_____kakushin000.shtml