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2006年05月23日(火) 00時00分

多重債務 アフターケアも大切だ 東京新聞

 消費者金融大手の「アイフル」が強引な取り立てで処分を受けたこともあり、上限金利引き下げへの追い風が強まった。だが、それだけで解消できるほど、多重債務の病根は浅くない。

 金融庁の「貸金業制度等に関する懇談会」は四月の中間提言で、出資法の上限金利(29・2%)と利息制限法の上限(15−20%)の間に横たわる「グレーゾーン(灰色)金利」を解消し、利息制限法の水準まで引き下げるよう求めている。

 これを受け、秋の臨時国会への改正法案提出に向けた与党内の調整が活発になっている。水面下では、むしろ引き上げを求める消費者金融業界と日弁連などとの綱引きも、さらに激しさを増してきた。

 格差社会が広がるなか、高金利が多重債務者の温床になっているのは事実であり、上限金利は引き下げられるべきである。

 だが、それだけで全国二百万人という多重債務者すべてがすぐに、救済されるわけではない。

 金利が下がると審査を厳しくせざるを得ず、消費者金融からあぶれた人が、違法な存在であるヤミ金業者に走ってしまう−。業界側が引き上げを求める理由である。

 残念ながら、その恐れは否めない。そこで、上限金利の引き下げを前提に、政府、自治体や弁護士会、司法書士会、市民団体すべてが連携し、多重債務者根絶に向けた総合的な対策を今から講じておくべきだ。

 まず第一に、相談窓口の拡充とPRの強化が急がれる。

 多重債務者は、専門家への相談をきっかけに、簡易裁判所での特定調停や、弁護士、司法書士による任意整理などを経て、借金の連鎖からきっぱり足を洗える場合が多い。申請後は利息がかからず、追加の借金はできなくなるから、残金を計画的に返済できるようになる。

 利息制限法の法定金利の枠内で利息を“線引き”し直すと、過払い金が返還されるケースも少なくない。

 ヤミ金業者は、途方に暮れる多重債務者やその予備軍を手ぐすね引いて待っている。借金依存の不安定な心のすきをついてくる。

 過渡期における取り締まりの強化はもちろんだが、カウンセリングによる心のケアや家計管理の指導など、多方面にわたる専門家の参画が望まれる。

 なりふり構わず消費者金融との提携を強める銀行や、大量のCMを日々流し続ける放送業界も、これを機に自らの役割や影響力を顧みて襟を正すべきだろう。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060523/col_____sha_____003.shtml