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2006年05月23日(火) 00時00分

横浜市立保育園民営化『違法』認定 『人を扱ってる認識を』 東京新聞

 横浜市立保育園の民営化をめぐり、同市の対応を違法とする判決が二十二日に横浜地裁で言い渡されたことに、市はショックを隠せない。判決を受けても「十分な説明を行った」とするが、発表から一年弱で保護者に理解されないまま民営化に踏み切った背後には、「一年でできないものは五年たってもできない」と語り、行政見直しでスピードを重視する中田宏市長の意向が反映している。市は控訴するとみられ、決着は上級審に委ねられそうだが、地裁判決が市の行政運営の進め方に与える影響は大きい。 (金杉貴雄、佐藤大)

 「民営化に反対したのではなく、説明を聞こうとしたのに、市は最初から『来年四月から民営化する』と決定を突きつけてきた」。会見した原告団の代表、金道敏樹さん(46)は、市の対応をあらためて批判した。

 市立丸山台(港南区)、鶴ケ峰(旭区)、岸根(港北区)、柿の木台(青葉区)の四園の民営化を市が発表したのは、二〇〇三年四月二十三日。入園前なら他の保育園を希望する選択肢もあったのに、その四月から入園した児童の保護者にとっては「なぜもっと事前に知らせてくれないのか」との不満が噴出。他の保護者も、環境が大きく変わることに不安を募らせた。

 零歳から六歳までの保育園児たちは、環境の変化にデリケートだ。民営化では、担当の保育士が変わるだけではなく、園の保育士が全員変わる。

 しかも、四園の引き継ぎのために設けられた民営団体との共同保育期間はわずか三カ月。民営化前後で統計の取り方が違い一概に比較できないが、四園でけがをする園児の数は民営化後に倍近くに増えたとの報告もある。実際、民営化初日に柿の木台保育園では、遊んでいた女児が鼻の骨を折る事故も起きた。

 当時の市の対応は、保護者への説明でも言葉尻をとらえられないように意識したのか、言葉を尽くしているようには受け止められず、翌年四月の民営化は決定事項として「ご理解を」と言うばかりだった。

 民営化の目的について市は、三歳児以上の主食提供や一時保育、延長保育など「多様化する保育ニーズに対応するため」とする。「各園のサービスを公平に提供する必要がある市立園では、そうした施設や保育士を一度に準備しなければならないが、財政難で難しいため、徐々に民営化して民間の責任で柔軟に対応してもらう」と説明する。

 しかし、民営化初年度に保護者や児童が不安を持ち、理解されないままなのに、何が何でも翌年四月に実施しなければならないとする、説得力のある理由は示されなかった。

 市は他の自治体での事例を検討したとしているが、果たして十分だったのか。実際、民営化二年目からは、対象保育園の発表から実施までの期間を一年半に延ばし、共同保育の期間も五カ月にしている。

 金道さんは「公立か民営かということではなく、園児という『人』を扱っていることを認識して、市は判決を重く受け止めてほしい」と訴えていた。

<横浜地裁判決の骨子>

 ▽児童福祉法は、保育所選択について保護者の法的な利益を保障している

 ▽民営化自体は多様な保育ニーズに応える目的で、違法とまでは言えない

 ▽市の突然の民営化発表や3カ月間だけの引き継ぎ期間は、保護者の利益を尊重していない

 ▽4保育園の早急な民営化は、市の裁量の範囲を逸脱し、乱用したもので違法だ

 ▽ただ、民営化から2年が経過しており、無用な混乱を避けるため、取り消し請求は棄却する

 ▽保護者の慰謝料は、1世帯10万円が相当


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kgw/20060523/lcl_____kgw_____001.shtml