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2006年05月19日(金) 00時00分

『住』の安心を取り戻せ 耐震偽装 東京新聞

 耐震偽装事件は発覚から半年、ようやく捜査が“本丸”にたどりついた。詐欺容疑でのヒューザー・小嶋進社長らの逮捕である。真相解明と同時に、「住」の安心を取り戻す施策が望まれる。

 「刑事訴追の恐れがあるので証言は控えさせていただきたい」

 今年一月の国会での証人喚問で、そんな台詞(せりふ)を三十回近くも聞かされた。「恐れ」どおり、小嶋容疑者は刑事責任を問われることになった。

 容疑となったのは、「不作為の詐欺」という耳慣れない罪である。詐欺とは、うそをつくなど作為的な言動で相手をだまし、財物を手に入れる犯罪である。「不作為」のほうは、知らせるべき重要事実を告げないで財物を手に入れる行為を指す。

 耐震偽装事件に当てはめると、小嶋容疑者は昨年十月二十八日の段階で、神奈川県藤沢市のマンションの耐震強度の不足を知りながら、それを顧客に告げないで販売し、代金をだまし取った疑いである。

 その前日には、ヒューザー本社で民間指定確認検査機関などと協議が持たれた。その際、小嶋容疑者が「天災地震にて倒壊したときに、調査し発覚したことにしたい」と発言したことが、同機関側の会議録などに記されているという。

 小嶋容疑者側では否定しているが、事実ならばあまりにひどい。「天災」どころか、まぎれもない「人災」の事件だ。安全を二の次にする倫理観のなさにはあ然とするばかりだ。捜査当局には徹底的に調べ、不正を洗い出してもらいたい。

 欠陥があった場合、買い主が売り主に対し、損害賠償などを求めることができる瑕疵(かし)担保責任の制度はある。だが、売り主が経営破綻(はたん)してしまえば、制度が事実上、“空文化”してしまうことも大問題だ。

 再発防止のためには、売り主に欠陥住宅補償の保険加入を求めたい。だが、今国会に提案されている偽装防止の関連法案では、売り主の保険加入義務は先送りされた。保険業界との調整不足などのためだが、今後の課題といえよう。

 法案では構造計算の偽装などに対する罰則強化もなされているが、果たして十分な効果が得られるか。建築確認について、第三者機関の審査が盛り込まれたが、うまく機能するか、疑問視する声もある。審議を尽くし、二度とこのような事件が起こらぬよう抜本的な方策を立ててもらいたい。

 人命や財産にかかわる重大事件である。業界はもちろん、こんなでたらめを許した建築行政に対しても、猛省と責任を求めたい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20060519/col_____sha_____003.shtml