悪のニュース記事

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2006年05月19日(金) 03時21分

5月19日付・編集手帳読売新聞

 みすぼらしい安下宿が「群鶴館」という美しい名前であるのを見て、猫が言う。「名前に税はかからんから御互(おたがい)にえらそうな奴(やつ)を勝手次第に付ける」と。夏目漱石「吾輩(わがはい)は猫である」の一節である◆マンション開発会社の「ヒューザー」も“勝手次第”組だろう。強度不足を知りつつ物件を売りさばいた行為は、ヒューマン(人間的)ともユーザー(利用者)とも無縁である◆「口に税はかからぬ」という言い回しもある。詐欺の疑いで逮捕された社長、小嶋進容疑者(52)は耐震偽装事件が明るみに出てからというもの、税はかからぬとばかりに気ままな発言を重ねてきた◆参考人質疑での「何言ってんだよ、ばかやろう」と、「国交省もいい加減にしてほしいですね、全く」。証人喚問で27回繰り返した「証言は控えさせていただきたい」。喚問を終えて報道陣には、「証言拒否なら偽証罪よりも(罰則が)相当軽い…」と語っている◆宮城県の農家の二男に生まれた小嶋容疑者は21歳で上京し、幾つもの職を渡り歩いたあと、27歳で会社を興した。創業の当時は胸にあっただろう「ヒューマン」と「ユーザー」を忘れずにいたならば、立志伝をみずからの手で汚すことはなかっただろうに◆名前や口に税はかからなくとも、顧客の信頼に詐術で報いたことの年貢は納めねばならない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060518ig15.htm